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連載:第8回 補助金・助成金 活用術

補助金と助成金を単独で利用するのはもったいない?組み合わせで可能性が広がります

BizHint 編集部 2020年3月14日(土)掲載
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補助金と助成金はそれぞれ単独で申請してもメリットはありますが、うまく連携させることで更なる化学反応も期待できます。効果があった先行事例を紹介しながら、どのように進めるべきかを考察します。

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1 補助金と助成金

中小企業にとって、最も大きい課題の一つが資金繰りではないでしょうか。お金がなければ人を雇うこともできず、事業を継続することもできません。そんなとき、銀行に頼ることや、誰かに出資者になってもらうこと以外の方法で、お金を調達する手段の一つが、補助金や助成金になります。

しかし、「お金が欲しい」から補助金や助成金を申請する、といった考え方は少しもったいないです。補助金や助成金を事業戦略の中に組み込んでいくことが事業を発展させていく上で大切です。

では、補助金と助成金とは何でしょうか。 補助金・助成金は、国や地方公共団体・民間団体が、要件を満たす事業者にお金を支給してくれる制度です。交付されたお金については 原則返済不要 です。従って、やりたいことがあっても資金繰りに悩み、実行に移すことができない中小企業にとって、力強い味方となります。

また、それだけではありません。「補助金や助成金を受けたことがある」ということ自体が評価され、会社の信頼が上がるという副次的なメリットまであるのです。

しかし、申請さえすれば、お金がもらえるのか、といえば答えはNoです。 なぜなら、補助金・助成金を実施する機関には

  1. 予算の制約がある
  2. 公益性の担保が必要

といった縛りがあるからです。そのため、すべての事業者が受給することができるのではなく、事業者側が申請を行い、機関の審査を受ける必要があります。 では、補助金と助成金はどう違うのでしょうか。

  • 「補助金」は、経済産業省の管轄で中小企業などの法人にフォーカスしたもの
  • 「助成金」は厚生労働省の管轄で雇用の安定化や従業員育成など、人にフォーカスしたもの

また、助成金が形式面の審査要件をクリアすれば受給の対象になるのに対し、補助金は形式面の審査に加えて、内容面の審査についても合格しなければ受給できないといった違いがあります。

補助金と助成金の違いについては、図表1にてまとめていますので、ご参照ください。

<図表1 補助金と助成金>

2 補助金と助成金は併用できる?

では、補助金と助成金を併用していけば、どんどんお金をもらえる、となるのでしょうか。

残念ながら、必ずしもそうではありません。同じ会社ばかりが補助金・助成金を独占的に利用することを防ぐため、申請書類では、過去にどのような補助金や助成金を受けたかについての記載を要求しています(もちろん、この書類に虚偽記載をしたことがばれてしまえば、一発アウトです)。

つまり、どちらかといえば併用できないケースの方が多いと考えて下さい。

しかし、ここで引き下がっては、このコラムの意味はありません。 実は、併用できる場合もある のです。

例えば

  • 目的の異なる補助金・助成金の組み合わせ
  • 同じ企業が申請する場合でも事業内容が異なるもの

などについては、併用が認められることがあります。

また、特別に併用が認められているものもあります。例えば、厚生労働省の「障害者トライアル雇用奨励金」と「特定求職者雇用開発助成金」は、働きたい障がい者や障がい者を雇用したい企業の支援を目的とするものですが、平成28年4月1日に制度が改定され、併用できるようになりました。

さらに、国の「創業支援等事業者補助金」と、自治体が実施する補助金・助成金についても、併用が認められるケースもあります。

3 補助金と助成金併用の例

補助金と助成金を併用していくうえで大事なことは、補助金や助成金をそれぞれ別のものとして考えるのではなく、会社全体の事業戦略の中に組み込んで考えていくことです。 そのためには、「会社として、何を目指して、補助金・助成金の申請を行うか」を考えることが大切です。

会社の目指す姿を意識して、その方向の中で利用できる助成金や補助金を当てはめていくことができれば、併用できる可能性は広がっていきます。

例えば、あるウェブ開発会社では、自社サービス(ウェブ制作業務)をPRするために、「小規模事業者持続化補助金」を活用し、広告費用に当てることを考えていました。

しかし、人手不足から販促活動を担当する人材がいなかったため、経理・総務業務を行っていた総務部門のうち1名を販促活動に専任させることを検討します。
実際に異動を実現させるためには、人員を出す側になる、総務部門から不満の声が上がったことから、経理業務や総務業務の負荷軽減が課題となりました。

そのため、「業務改善助成金」による会計システムの導入と、「IT導入補助金」によるクラウドサービスの導入を図ることによって、総務部門の負荷軽減を図ることにします。それによって、ついに1名を販促活動に専任させることができました。

しかし、異動したばかりの販促活動の専任者は、もちろんPR活動に不慣れでした。そのため、「人材開発支援助成金」を使ってPR活動に関するセミナーを受けさせ、ノウハウを習得させることにします。その結果、徐々に自社サービスのPRも軌道に乗るようになってきました。

こうしてこの会社は、補助金・助成金と事業戦略をうまく組み合わせ、総務部門の機能維持・増強、販促要員の育成による販促機能の強化を両立させたのです。

<図表2 事業戦略と補助金・助成金の組み合わせの例>

このように、会社の事業戦略・人事戦略と、活用できる補助金・助成金の方向性がかみ合えば、無理なく補助金・助成金を併用できます。これによって、会社は足りなかったリソースを埋めることができ、自社を強化することができます。

4 注意

では、事業戦略に合わせて、いざ補助金・助成金を併用しようと考えていても、本当にそれが可能なのでしょうか。
先に触れたとおり、必ずしも、思い通りになるとは限りませんので、事前に確認しておくことが大切です。

補助金・助成金の申請は手間がかかります。実際に申請してみたものの、「ほかの補助金・助成金を利用していたために採択されない」、といったことが起これば目も当てられません。補助金・助成金の申請にはかなりの手間とコストがかかります。 事前に、補助金・助成金の申請窓口や専門家などに、きちんと相談し、確認しておくことが大切 です。

また、当たり前のことですが、申請をする上では、ほかに受給しているもの・過去に受給していたものを正確に記載し、虚偽記載は絶対にやめましょう。

補助金と助成金を組み合わせて申請をする上では、多数の申請を行うことになります。それぞれ窓口が異なるため、「ばれないだろう」という軽い気持ちで虚偽申請をしても、すぐにばれてしまいます。この場合、採択・受給されないばかりか、「不正受給」と見なされ、詐欺罪(刑法第 246 条)に問われる可能性があります。なお、申請をした段階でも「不正受給」と見なされることに注意しましょう。

また、受給されたからばれずに済んだ、と考えるのは早計です。あとで発覚した際には、受給済みの補助金・助成金の返金を求められてしまいます。絶対にやめましょう。

5 まとめ

いかがでしたか。

自社の事業戦略の中に、補助金・助成金を組み込み、それらを合わせて活用することで、例えば自社の機能強化と、社員の育成の両立を図る、といったシナジー効果が期待できます。

手間がかかる申請手続きが無駄にならないよう、事前にきちんと確認を行って受給し、事業をさらに成長させていきましょう。

(執筆)
株式会社プロデューサー・ハウス 五味義也
中小企業診断士/MBA

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