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連載:第9回 補助金・助成金 活用術

災害リスクに備える「事業継続力強化計画」の認定制度とは?

BizHint 編集部 2020年4月3日(金)掲載
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日本のどこであろうと起こり得る災害。どんな会社でも事業継続の観点から、災害対策を迫られるなか、令和元年7月に施行された中小企業強靱化法では、中小企業の防災・減災を推進するために「事業継続力強化計画」の認定制度が創設されました。中小企業にとってややハードルが高かったBCP(事業継続計画)を代替する、「簡易BCP」とも言われる制度を解説します。

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1.事業継続力強化計画とは

「事業継続」とは、災害などが発生したときにおいても事業を継続できるように対策を事前に準備しておくことです。

今回解説する「事業継続力強化計画」は、令和元年7月に施行された「中小企業強靭化法」に基づく新しい制度です。

今までBCP/BusinessContinuityPlan(事業継続計画)の策定が、基本方針の立案から運用体制の確立、そして万が一の事態に向けて継続的に備えるという大規模な運用を前提としていたために、当初の計画ほど企業への導入が進まなかったそうです。災害リスクに対して何の備えも進んでいない中小企業の状況を懸念し導入されたのが、この「事業継続力強化計画」とも言われています。

(1)BCPとの違い

BCPは、30人以上の人員を収容する店舗や施設が、消防署に提出する消防計画などと同様、リスクを予期して組織体制を整え、人命の安全の確保を計る、そして最終的には企業の所属するサプライチェーンの維持を目的に、代替生産手段の確保や指揮命令系統の維持を確立するというものでした。一説によるとその枚数はA4紙で40枚超。

「事業継続力強化計画」は簡易版BCPとの話もありますが、計画としてはそれほど複雑なものを求められている訳ではありません。「まずは計画を立ててみて下さい」と言う背景があるのか大幅に簡略化されて、大体の会社はA4紙で10枚以下の計画になっているようです。

事業継続力強化計画の提出書類は、中小企業庁のホームページからダウンロードできるフォーマットやチェックリストに従って対策を立てながら作成します。その計画に対して認定が得られると「低利融資・信用保証枠の拡大などの金融支援」「防災・減災設備に対する税制優遇」「補助金の優先採択」といったメリットがあります。

また認定が得られると、認定ロゴマークが使用できるようになります。ホームページや名刺などに使用して「BCP対策策定済」であることを対外的にPRできます。「うちが巻き込まれることはない」がもはや通用しない昨今、認定の事実をアピールできることは取引先に安心感を与えることができる資産となります。

出典:中小企業庁ホームページ事業継続力強化計画認定ロゴマーク

(2)メリット①金融支援

事業継続力強化計画の認定を受けると、設備投資に必要な資金について日本政策金融公庫から下記の優遇を受けることができます。

また、民間金融機関から融資を受けるときに必要となるケースの多い、信用保証協会による信用保証については、下記の保証が得られます。

(3)メリット②設備に対する税制優遇

認定された事業継続力強化計画に従って導入した防災・減災設備について、取得価格の20%の特別償却が適用されます。対象となるのは、自然災害が発生したときに事業活動の継続を実現しうる内容と適切な数量たる下記の設備です。

出典:令和元年12月中小企業等経営強化法事業継続力強化計画策定の手引き

2.申請にあたって検討する5つのこと

事業継続力強化計画の申請にあたり、次の5つについてステップごとに検討すると、計画が完成します。冒頭でご案内した申請書のフォーマットはA4紙で5ページであり、それを埋めていきます。

(1)事業継続力強化の目標

自社の事業概要をまとめた上で、その継続に取り組む姿勢を表明し、影響度を「人員」「建物・設備」「資金繰り」「情報」「その他」の項目ごとに整理していきます。例えば「人命(従業員、顧客)を第一に、地域社会の安全に貢献する」など、自社の理念と照らし合わせて考えます。

(2)災害リスクの認識

事業所の位置する地域の ハザードマップ などを利用して、事業活動に影響を与える自然災害を想定します。もっとも被害の大きい災害と限らず、災害の影響が数週間程度は及ぶようなケースを想定して考えることも必要です。項目によって影響を受けることがない場合は、その理由や背景を記載すると良いでしょう。 具体例は下記の通りです。

(3)初動対応

災害発生直後の行動は重要なポイントですが、災害による被害を具体的にイメージできるようになることで適切な初動対応をとることができます。なかでも「従業員の避難」と「従業員の安否確認」は必ず記載する必要があります。 社内の緊急体制の整備や被害状況の把握方法を確立しておくことは事業継続において重要な役割を果たします。

(4)ヒト、モノ、カネ、情報への具体的な対応

災害発生後も事業を継続するために必要な対策及び取組を整理します。中でも「事業継続力強化に資する設備、機器及び装置の導入」は、この制度のメリットである税制優遇が受けられる重要なポイントです。同時に金融支援を受ける場合は、具体的に導入する設備を記載し、「事業活動を継続するための資金の調達手段の確保」にて資金調達方法を記載します。

(5)平時の推進体制

災害発生時に計画が実効されるために平時から行う取り組みを検討します。実効性の確保には経営層の関与が不可欠です。必ず経営層のコミットメントについて記載します。 具体例は下記の通りです。

3.まとめ

いかがでしたか。事業継続力強化計画、策定の手引きを一読しただけではなかなか理解が難しいですね。また計画申請から認定が下りるまでの期間も45日程度かかります。災害はいつ来るか分からないからこそ、早めの備えが重要です。

是非みなさんも公的機関や支援機関、中小企業診断士などに相談しながらこの制度をうまく活用して下さい。そして御社のリスクヘッジと共に、この制度の利用が、その後の事業拡大につながることを切にお祈りいたします。

※最新の情報はホームページにてご確認下さい。

(執筆)
株式会社プロデューサー・ハウス打越大輔
中小企業診断士
1級販売士

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