close

はじめての方はご登録ください(無料)

メニュー

BizHint について

カテゴリ

最新情報はニュースレター・SNSで配信中

連載:第45回 総合 2020年1月~3月

「休廃業・解散」動向調査(2019年)7年ぶりに「休廃業」増加、前年比 0.5%増 ~「休廃業・解散」合計は3年ぶりに増加~

BizHint 編集部 2020年2月4日(火)掲載
メインビジュアル

近年、企業の休廃業・解散による経済的損失が大きいことがクローズアップされている。中小企業庁は、2025年には日本企業全体の3分の1にあたる127万社が、後継者不足などによって廃業リスクに直面すると試算。得意先などの休廃業・解散により販路を失い、事業継続を断念した企業も散見され、開業社数や企業数が大都市に比較して少ない地方ほど、休廃業・解散による影響が広く出始めている。 帝国データバンクは、「休廃業・解散」に至った事業者(法人、個人含む)を集計。倒産件数との比較や、代表者年齢別、業種別、都道府県別に傾向を分析した。

メインビジュアル

調査結果(要旨)

  1. 2019年(1~12月)の「休廃業・解散」件数は、全国で2万3634件(前年比 2.6%増)判明。前年(2万3026件)を608件上回り、3年ぶりの増加に転じた。なかでも、経営者が自主的に経営や事業を畳む「休廃業」(1万2764件)の件数は、2012 年以来7年ぶりに増加
  2. 代表者年代別に見ると、リタイア適齢期に当たる「70代」が7197件(構成比37.6%)となり、3年連続で全年代中最多。集計可能な2000年以降でも最多だった。2019年で最も多かった年齢は「71歳」で過去最高を更新した
  3. 業種別では、全7業種中5業種で前年を上回った。なかでも「サービス業」(5221 件、構成比 22.1%)は前年から 2.7%増加した。業種細分類の件数では、最も多かったのが「木造建築工事」の1231件。休廃業・解散率では牛乳配達などを手掛ける「牛乳小売」(4.09%)が前年から2.53ポイント急増して全業種中トップとなった
  4. 地域の休廃業・解散動向では、9地域中8地域で前年を上回った。都道府県の件数で2019年に最多となったのは「東京都」の2582件。休廃業・解散率では「福井県」の2.27%がトップとなった

1.概況~2019年は2万3634件発生で3年ぶり増加、「休廃業」は7年ぶり増加に~

2019 年(1~12 月)に「休廃業・解散」した企業(個人事業主を含む)は、全国で 2 万 3634 件(前年比 2.6%増)判明。前年(2 万 3026 件)を 608 件上回り、3 年ぶりの増加に転じた。このうち、経営者が自主的に経営や事業を畳むケースを含んだ「休廃業」(1 万 2764 件)の件数は 7 年ぶりに増加。東日本大震災発生後に増加した 2012 年(1 万 6077 件)以降、緩やかな減少傾向が続いていたが、2019 年は潮目に変化が生じた。「解散」(1 万 870 件)では、2016 年の 1 万 617 件を上回り過去最多を更新。大企業の子会社の再編なども背景に 4 年連続で 1 万件を超える水準で推移した。休廃業・解散件数は 2019 年の法的整理である倒産件数(8354 件)の 2.8 倍と高水準で推移。「休廃業・解散率」は 1.61%と前年を 0.04 ポイント上回り、3 年ぶりに増加に転じた。

この結果、2019 年の休廃業・解散企業における従業員数合計は約 6 万 7 千人、売上高合計は 1兆 9425 億円に達した。ただ、従業員数合計・売上高合計のいずれも前年に比べて減少した。

2.代表者年代別~休廃業・解散企業の代表高齢化が止まらず、2019年の最多年齢は「71歳」~

代表者年代別に見ると、リタイア適齢期に当たる「70 代」が 7197 件(構成比 37.6%)となり、3 年連続で全年代中最多。集計可能な 2000 年以降でも最多件数となった。

年齢別では、最多の年齢が 10 年前の 2009 年(62 歳)から、18 年には初めて 70 歳に到達。19 年は 18 年を上回る「71 歳」に達した。平均年齢は 67.9 歳となり、いずれも集計開始以降で過去最高を更新した。

近年、休廃業・解散を行うピーク年代は「60 代」から「70 代」へ移行している。後継者不在のなか、特に代表者が高齢化したことで事業継続が困難となったケースが多いと見られる。

一方、事業承継の目安となる「60 代」のほか、現役世代に当たる「30 代」~「50 代」では件数・構成比ともに減少した。


3.業種別~全7業種中5業種で増加、「サービス業」で増加顕著~

業種別では、全 7 業種中 5 業種で前年を上回った。なかでも「サービス業」(5221 件、構成比22.1%)は前年から 2.7%増加し、2 年ぶりの前年比増加となった。

他方、減少となった 2 業種のうち、「建設業」は 7087 件(構成比 30.0%)となり休廃業・解散のなかで最多となったが、件数は 2017 年以降 3 年連続で減少した。「運輸・通信業」(422 件、同1.8%)も、18 年以降 2 年連続の減少に転じた。

業種細分類の件数では、最も多かったのが「木造建築工事」の 1231 件。以下、「非営利的団体」(961 件)、「土木工事」(694 件)、「不動産代理・仲介」(564 件)、「土木建築サービス」(432 件)と続き、上位 20 業種中 12 業種が「建設業」で占められた。

他方、休廃業・解散率の高い業種では牛乳配達などを手掛ける「牛乳小売」(4.09%)が前年から 2.53 ポイント急増して全業種中トップとなった。2 位以下は「寝具小売」(3.77%)、「米穀類小売」(3.71%)、「技術提供」(3.68%)、「畳小売」(3.52%)など。上位 20 業種中 14 業種が「小売業」となり、18 年から 4 業種増加した。

休廃業・解散率でトップだった「牛乳小売」は、2019 年の倒産でも 10 件発生し過去最多を記録した。牛乳製品はスーパーなど量販店では目玉商品として安価に販売されるケースが多く、価格面で不利となりやすい。また、牛乳配達も総じて労働集約産業であり身体的な負担も大きい。そのため経営環境の悪化や代表の高齢化もあって、事業継続を断念したケースが多いとみられる。また牛乳小売のみならず、地場で対消費者向けビジネスを展開する企業などでは、全国で年間鳥取県分に相当する人口が減少しているほか、消費者の好みや時代の変化、法改正や規制緩和、産業構造の変化に対応困難となり、事業継続を断念したケースは多い。なかでも、郊外の大型量販店やチェーン店、ショッピングモールといった大型商業施設の進出が脅威となっており、小売店の「休廃業・解散率」を押し上げる要因の一つとなっている。


4.地域・都道府県別~休廃業・解散率、「福井県」が2.27%で初のトップに~

地域別では、9 地域中 8 地域で前年を上回った。なかでも「中国」は 2013 年以来 6 年ぶりの増加に転じたほか、「四国」では 5 年ぶり、「北海道」「九州・沖縄」など 5 地域で 3 年ぶりの増加となった。また、「北陸」は 15 年以来 4 年ぶり、「四国」は 07 年以来 12 年ぶりの前年比 2 ケタ増となった。

都道府県の件数では、2019 年で最多となったのは「東京都」の 2582 件。2 位以下、「大阪府」(1341 件)、「北海道」(1310 件)、「愛知県」(1156 件)、「神奈川県」(1067 件)、「埼玉県」(939 件)などが続いた。総じて企業数の多い大都市圏で件数が多く発生している傾向には変化がない。

休廃業・解散率では、「福井県」(2.27%)がトップとなった。「福井県」の休廃業・解散率が全国で最も高いのは、遡及可能な 2009 年以降の 10 年間で初となる。2 位以下、「宮崎県」(2.12%)、「山梨県」(2.04%)、「徳島県」(2.00%)と続いた。総じて、東北~北陸地方や四国地方、九州・沖縄地方など地方部の都府県で休廃業・解散率が高くなる傾向に変化は無かった。

都道府県別 件数 / 休廃業・解散率

5.まとめ

2019 年の「休廃業・解散」は 2 万 3634 件発生し、3 年ぶりに増加に転じた。なかでも、自主的に経営や事業を畳むケースを含んだ「休廃業」(1 万 2764 件)が 7 年ぶりに増加。地域別に見ても、関東地方を除く 8 地域で増加に転じ、減少傾向が続いていた休廃業・解散のトレンドに変化が表れた。

これまで景況感の緩やかな回復を背景に休廃業・解散件数は減少傾向で推移しており、2018 年はリーマン・ショック以降で最少となる水準を記録した。ただ、この間も近年の自主廃業の要因として多く挙げられる「代表の高年齢化」や「後継者不在」の解決には至っていない。こうしたなか、2019 年は各業界で人手不足の進行や原材料費の上昇、高止まりが加速。10 年の長きに渡って中小企業の資金繰りに強力な効果を発揮した金融円滑化法(モラトリアム法)が実質的な役割を終え、消費税率の段階的な引き上げなども実施された。景況感を見ても、米中貿易摩擦など海外リスクを発端に回復局面から一転して後退局面入りが鮮明となった。休廃業・解散が増加した背景には、円滑な事業承継や将来的な事業の成長が望めない企業を中心に、経営環境の悪化で負債が膨らむなどして追い込まれる前に自ら事業を畳む「アクティブ型」の休廃業を選択せざるを得ない機会が増加したことも要因とみられる。

中小企業の休廃業・解散では、優良技術や販路喪失はもとより、年間で約 7 万人に及ぶ雇用への影響が発生している。そのため、休廃業・解散の増加は地方ほど地域経済へのダメージが大きく、国や地方自治体が廃業を防止する積極的な働きかけを進める主要因となっている。ただ、こうした支援は中小企業への普及・浸透のフェーズにあり、事態の解消や解決に向けた道筋はなお時間がかかるとみられる。一方で、今後も企業景況感の緩やかな後退が予測されており、加速度的に進行する人口減少も相まって、一層の経済縮小が予想される地方を中心に廃業等で消滅する企業の増加が続く可能性は高いものと推察される。

転載元:帝国データバンク
特別企画:全国「休廃業・解散」動向調査(2019 年)

この記事についてコメント({{ getTotalCommentCount() }})

close

{{selectedUser.name}}

{{selectedUser.company_name}} {{selectedUser.position_name}}

{{selectedUser.comment}}

{{selectedUser.introduction}}