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連載:第4回 よくわかる補助金・助成金 雇用・人材

長時間労働の対策はお済ですか?~2020年4月「時間外労働の上限規制」導入に向けて

BizHint 編集部 2020年1月10日(金)掲載
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2020年4月から、中小企業に時間外労働の上限規制が導入されます。長時間労働の見直しに向けて「業務の無駄を見直したい」「労務管理の手間を減らしたい」とお考えの中小企業の方も多いのではないでしょうか。今回は、そんな時間外労働の削減に取り組む中小企業の皆さまが活用できる助成金として「時間外労働等改善助成金(時間外労働上限設定コース)」をご紹介します。ぜひご覧ください。

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1.背景

 今般の働き方改革の一環として労働基準法が改正され、中小企業は2020年4月(大企業は2019年4月)から時間外労働の上限規制が導入されることとなりました。時間外労働の上限は、原則として月45時間・年360時間となり、臨時的な特別の事情がなければこれを超えることができません。違反した場合には、罰則(6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金)が科されるおそれがあります。長時間労働は、社員の健康の確保、ワーク・ライフ・バランス改善の観点からも見直しが求められており、中小企業においても喫緊の課題といえるでしょう。

出典:厚生労働省HP 時間外労働の上限規制 わかりやすい解説

2. 時間外労働等改善助成金(時間外労働上限設定コース)とは?

(1)概要

 時間外労働の上限時間を設定して、長時間労働の見直しに取り組む中小企業を支援する助成金です。時間外労働の削減に関する「成果目標」を設定し、対象の取組を実施することで、その達成状況に応じた取組経費の一部が助成されます。取組には、新たな機械・設備の導入、外部専門家によるコンサルティングなどがあり、助成額は 最大200万円 (補助率3/4)となっています!

(2)対象事業主

 対象となる事業主は、以下の条件にあてはまることが必要です。

平成29年度または平成30年度において、
① 「労働基準法第36条第1項の協定で定める労働時間の延長の限度等に関する基準」に規定する限度時間を超える内容の時間外・休日労働に関する協定を締結している
② 当該時間外労働及び休⽇労働を複数⽉⾏った労働者(単⽉に複数名⾏った場合も可)がいること
③ 以下のAまたはBの要件を満たす中小企業事業

(3)対象の取組

 対象の取組は、次のとおりです。一つひとつ見ていきましょう。

①労務管理担当者に対する研修(業務研修を含む)
 管理職等に対して、労働時間等の設定の改善の必要性等について周知を図るため、外部の講師を招いて研修を実施する、外部の専門家が開催するセミナー参加等。

 外部の講師・専門家は、社会保険労務士や中小企業診断士などの労務管理・経営面の専門家、医師や保健師などの健康面の専門家が該当します。

②労働者に対する研修(業務研修を含む)、周知・啓発
 労働者に対して、労働時間等の設定の改善の必要性等について周知を図るため、外部の講師を招いて研修を実施する、ノー残業デーの実施、長期休暇を取得しやすい雰囲気づくりに係る啓発等。

 労務管理担当者・労働者が特定の業務に従事する上で必須又は有益となる資格(タクシー業における2種免許、建設業における各種重機の運転資格等)の取得及び取得に向けた講座の受講、業務改善による生産性向上に向けた研修の受講等も対象になります。

③外部専門家によるコンサルティング
 外部の専門家による業務体制等の現状の把握、問題点・原因の分析、対策の検討・実施等。問題解決に必要な改善措置を実施する必要があります。

④就業規則・労使協定等の作成・変更
 労働基準法第 36 条第1項の規定によって延長した労働時間数を短縮して限度基準以下の上限設定を行うために必要な就業規則・労使協定等の作成・変更、届出。

⑤人材確保に向けた取組
 求人情報サイトや求人情報誌等への求人広告の掲載、合同企業説明会への出展、求人パンフレット・ダイレクトメール等の作成、人材採用に向けたホームページの作成・変更等。

⑥労務管理用ソフトウェア
 勤怠管理ソフトウェア等の導入・更新、事業場独自の勤怠管理ソフトウェアの開発(自社開発を除く)、勤怠管理ソフトウェアと連携し労働者のパソコンの使用を制御するソフトウェアの導入等。

⑦労務管理用機器
 労働者の労働日ごとの始業・終業時刻を記録することができるタイムレコーダー、ICカード、ICカードの読取装置等の導入・更新。

⑧デジタル式運行記録計
 車載機器として、車載器本体、記録媒体(メモリーカード等)等の購入、事業場用機器として、読取装置(メモリーカードリーダー等)、分析ソフトウェア等の導入・更新。

⑨テレワーク用通信機器の導入・更新
 労働者がテレワーク実施のために使用する機器として、シンクライアント端末装置、VPN装置等、事業場における機器として、シンクライアントサーバ、VPN装置、ネットワーク監視装置等の導入・更新。テレワーク用のソフトウェアも対象です。

⑩労働能率の増進に資する設備・機器
 労務管理用機器、労務管理用ソフトウェア、デジタル式運行記録計、テレワーク用通信機器のいずれにも該当しない、労働者が直接行う業務負担を軽減する、または生産性向上により労働時間の縮減に資する設備・機器等の導入・更新。

 小売店においてPOS装置を導入し在庫管理の負担を軽減する、飲食店において自動食器洗い乾燥機を導入し食器洗い作業の負担を軽減すること等が可能です。

(4)成果目標

 事業主は、申請時に提出する事業計画において「成果目標」を設定します。成果目標の達成に向けて、前項の取組みを実施します。

 時間外労働の上限設定については、平成31年度又令和2年度に有効な36協定の延長する労働時間数を短縮して、以下のいずれかの上限設定を行い、労働基準監督署へ届出を行います。
① 時間外労働時間数で月45時間以下かつ、年間360時間以下に設定
② 時間外労働時間数で月45時間を超え月60時間以下かつ、年間720時間以下に設定
③ 時間外労働時間数で月60時間を超え、時間外労働時間数及び法定休日における労働時間数の合計で月80時間以下かつ、時間外労働時間数で年間720時間以下に設定

 上記に加えて、週休2日制の導入に向けて、4週当たり5日から8日以上の範囲内で休日を増加させることを成果目標に加えることができます。成果目標を追加すると、上限額が 最大100万円 加算されます。

(5)支給額

 「成果目標」の達成状況に応じて、支給対象となる取組の実施に要した経費の一部が支給 されます。支給額は、以下のいずれか低い額となります。

Ⅰ 1企業当たりの上限200万円
Ⅱ 上限設定の上限額及び休日加算額の合計額
Ⅲ 対象経費の合計額×補助率3/4(※)
(※) 常時使用する労働者数が30名以下かつ、支給対象の取組で⑥から⑩を実施する場合で、その所要額が30万円を超える場合の補助率は4/5

Ⅱの上限額は次の通りです。

(6)申請スケジュール

 最後に、申請スケジュールを確認しましょう。

①「交付申請書」を作成したら、最寄りの労働局雇用環境・均等部(室)に提出します。
 締切は 2019年11月29日(金) です。
②交付決定後、提出した事業実施計画書に沿って取組を実施します。
③労働局に支給申請書を提出します。
 締切は 事業終了後から1カ月以内 、又は、2020年2月28日(金)(必着)です。

出典:厚生労働省HP

3.まとめ

 いかがでしたか。時間外労働の削減は、業務の見直しや社内の意識改革なども伴うため、一律な実施が困難といえます。しかし、長時間労働を是正することで、生産性の向上はもちろん、社員の健康の維持・向上や、ワーク・ライフ・バランスの改善にもつながります。「時間外労働の上限規制」導入に円滑に対応するためにも、ぜひ助成金を活用してみてはいかがでしょうか。

(執筆)
株式会社プロデューサー・ハウス 辻村藍

中小企業診断士

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