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連載:第7回 よくわかる補助金・助成金 創業

創業前に受講しよう!メリットたっぷりの「特定創業支援事業」はご存知ですか?

BizHint 編集部 2020年2月26日(水)掲載
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産業競争力強化法に基づき市町村が実施する「特定創業支援事業」は、創業希望者にとって多くのメリットがあります。将来的に創業を考えている方々は、「創業」に関してマーケティングや資金調達の知識を得られるだけではなく「金融機関の貸付利率の引き下げ」、「登録免許税の軽減」「様々な補助金事業の適用や上限引き上げ」などの特典も得ることができます。 創業希望者の方々にとって見逃す手はありません!

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「創業する」…なかなか決心ができないものですね。

そんな時に創業希望者の皆さんが検討するのは「創業セミナー・創業塾」ではないでしょうか。マーケティングや財務の知識、販促や人材募集のノウハウなど創業期に必要な知識を事前に身に付け、「事業計画」を作り込むことは順調なスタートアップに欠かせないものです。そのため多くの事業者がセミナー主催者となり、「創業」という一つのテーマに対して、複数の切り口でプログラムを提供しています。場合によってはかなりの高額な費用が必要となるケースもあります。

そこで今回注目してみたいのは、市区町村や公的機関が「特定創業支援事業」に基づき実施する「創業セミナー」です。このセミナーは「創業」にあたっての幅広い知識を学ぶだけではなく、受講を修了すると「金融機関の貸付利率の引き下げ」、「登録免許税の軽減」「様々な補助金事業の適用や上限引き上げ」など、出費の多い創業期にはありがたい多くのメリットがあります。もちろん行政機関などが運営するために、費用的にも民間より低額となっています。

多くの創業希望者が、この制度のメリットを理解し利用することで、実際の「創業」にいたるきっかけとなることを期待いたします。

1.特定創業支援事業が生まれた背景

我が国の開業率は5.6%(厚生労働省 雇用保険事業年報 2016年)であり、米国の9.3%や英国やフランスの13%台に対して、大きく下回っている状況が続いています。また人口オーナス時代に突入し、中小企業数や中小企業の従業員数が減少しているなかでは、「地域の開業率を引き上げ、雇用を生み出し、産業の新陳代謝を進めていく」ことが重要となります。

平成26年1月20日に施行された産業競争力強化法において、政府は欧米並みの開業率10%を目指し、地域の「創業」を促進させる施策として、「市区町村が民間業者と連携し、創業支援を行っていく取り組みを応援する」としています。こうした取り組みにより開業率の向上、地域の活性化や雇用の確保を実現することを期待してこの「特定創業支援事業」が生まれました。
(参考:中小企業庁 産業競争強化法における市区町村による産業支援のガイドライン)

図1 開業率の国際比較

出典:中小企業白書2019年版第1部第5章

2. 市区町村による特定創業支援事業への取り組み

平成26年に施行された産業競争力強化法に基づき、市区町村が地域の創業を促進するために民間事業者と連携して創業支援をする取り組みが生まれました。具体的には、よろず支援拠点、創業支援事業者への支援、認定創業スクール、創業補助金などいくつかの支援内容があり、現在認定を受けている市区町村は1,274件(47都道府県1,419市区町村)に上ります。

特定創業支援事業のなかでも主要なものとして、創業セミナーがあります(他に特定創業スクール・創業塾など多くの別名称あり)。市区町村等が創業希望者もしくは創業から5年未満の者に対して継続的に行う支援で、経営・財務・人材育成・販路開拓の4分野の知識を、4回以上かつ1ヶ月以上の継続的な支援(授業)を行い、提供するスクール型事業のことです。国のガイドラインとして、登記登録免許税の軽減や創業関連保証の増額がありますが、それぞれの市区町村ではプラスアルファの特典を用意しているケースが多いようです。詳しくは次章にて解説いたします。 

こちらは東京都渋谷区の創業支援事業計画の全体像です。

図2 創業支援事業計画全体像(東京都渋谷区)

出典:東京都渋谷区創業支援事業計画 一部抜粋

次に具体的な事業の支援内容をイメージできるよう、千葉県千葉市が、国の認定を受けた創業支援事業計画を基に行っている取り組みを紹介します。

(1) コワーキングスペース CHIBA-LABO オープンスペース型起業家支援事業

(2) 創業者研修 (全5回 参加費5,000円) 年2回実施 千葉市産業振興財団

事業計画書(収支計算書、資金繰り表を含む)作成ポイントの解説や作成演習を中心に、資金計画及び日常的な経理業務等を講義する。

(3) 経営力強化講座 (全6回 同上10,000円) 千葉市産業振興財団

起業、新事業の創出及び人材のキャリア教育を促進するため、経営戦略や組織マネジメント、マーケティングなどを学ぶ体系的プログラムを実施する。

(4) 創業スクール (全5回 同上 10,800円) 千葉商工会議所

創業に必要な知識を身につけるための全5日間の講座を開講、ビジネスプランの作成までサポートする。

(5) 創業スクール (4回+フォローアップ1回 無料) 年2回実施 千葉信用保証協会

創業のノウハウを習得してもらい、事業の手助けとなるセミナーを開催。4週に亘ってビジネスプランを作成、最終日には創業社長による経営者講演やビジネスプランの発表会を実施する。

3.特定創業支援等事業を受けた創業者のメリットは

次に創業者にとってのメリットを取り上げます。市区町村ごとに支援内容は異なりますので、ご利用の際には必ずご自身が事業を行う地域の取り組みをご確認下さい。千葉市で支援を受けたことの証明書を創業者が取得することで、得られるメリットは以下の通りです。

(1) 登録免許税の軽減

株式会社を設立するとき、登記に登録免許税がかかりますが、「資本金の0.7%」が「0.35%」に軽減されます。 *優遇を受けられるのは令和2年3月31日(予定)までに法務局に登記申請を提出された方となります。

(2) 創業関連保証の特例

創業2ヶ月前から対象となる創業関連保証が、事業開始6ヶ月前から利用の対象となります。

(3) 日本政策金融公庫の「新創業融資制度」の要件拡充

本制度の利用は「新たに事業を始める方、または事業開始後税務申告を2期終えていない方」という要件が加わりますが、支援を受けることで自己資本金要件は満たしているものとみなされます。

(4) 日本政策金融公庫の「新規開業支援資金」の貸付利率引き下げ

本制度の利用において、貸付利率の引き下げの適用を受けます。

(5) 千葉市の「商業者創業支援事業補助金」

店舗開業を希望する小売業・飲食サービス業の創業者を対象とした補助金を申請する要件の一部を満たすことになります。
一例 : 「店舗改修費の1/2の金額に対し、補助率2/3、補助金限度額100万円」など。

(6) 労働局の「生涯現役起業支援助成金」

40歳以上の方の起業を支援する補助金を申請する要件の一部を満たすことになります。
一例 : 「60歳以上起業の場合 補助率2/3、補助金限度額200万円」など。

その他平成30年度第2次補正における小規模事業者持続化補助金(公募受付は既に終了しています)では、創業支援等事業の支援を受けた事業者は通常50万円の補助上限額が100万円に引き上げられていました。

4. 特定創業セミナーのコンテンツ

それぞれの市区町村や共同で行う支援団体などがさまざま特色を打ち出していますが「経営、財務、人材育成、販路開拓」の4分野を4回以上の授業を行うことが基本的な条件となっています。

今回は一例として、東京都渋谷区で2019年の9/7から10/5まで毎週土曜日に全5回(午後13:00-16:45)にて実施された「SHIBUYA創業セミナー」の内容をご紹介します。対象者は渋谷区内で創業を検討中の方に、40名限定で、受講料無料で実施されました。 「SHIBUYA創業セミナー」

1日目 創業準備  自分の歴史を振り返って創業しよう!
2日目 マーケティング お客さまを幸せにする仕組みをつくろう!
3日目 会計・IT活用 長続きするお金の回し方をしよう!
4日目 収支計画 実際に創業の計画を作ってみよう!
5日目 交流会  創業に向けてネットワークを広げよう!

5. まとめ

いかがでしたか。今回はご紹介した「特定創業支援」は、私が脱サラをして創業した7-8年前にはなかった、比較的新しい制度です。今後自分が改めて創業するならば、絶対に利用したいと思うメリットが多数あります。

皆さんのお住まいの市区町村により創業支援事業計画が異なり、それにより支援事業の内容や特典も異なってきます。地域によって「創業セミナー」の開催は、年1回の開催に留まっているところも多数あります。まずはご自分のお住まいや創業希望地の市区町村行政ホームページを確認してみて下さい。

また創業支援事業者である地域の商工会または商工会議所が策定する「経営発達支援計画」でも、創業支援について数多く記載されています(2019年3月時点で1,633件が認定)ので、こちらもあわせてご覧になってみてはいかがでしょうか。

中小企業庁  創業・ベンチャー支援>産業競争力強化法に基づく認定を受けた 市区町村別の創業支援等事業計画の概要
https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/chiiki/nintei.html

中小企業庁  小規模事業支援法に基づく「経営発達支援計画」の認定について 認定経営発達支援計画の内容について
https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/shokibo/ninteikeikaku.html

(執筆) 株式会社プロデューサー・ハウス 打越大輔
中小企業診断士 1級販売士

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