連載:第2回 よくわかる補助金・助成金 雇用・人材
こんなに差が出る!補助金を意識した人材の採用・育成


近年、企業にとって人材市場は厳しさを増しています。高齢化が進み、若者人口が減少し、全国の有効求人倍率はリーマンショック後の2009年で0.47だったものが、2018年では1.61と3倍以上になっています。そのためうまく人材採用ができず、人手不足倒産となってしまうところもあるといいます。その結果、人材採用のコストが増加し、企業の負担も増すことがあるでしょう。そのような中、雇用関係の助成金は起業支援や地域振興と並んで、企業がもっとも活用できる分野の一つです。うまく活用することで、負担を大幅に減らすだけでなく、より魅力あるそして競争力のある企業体質へと生まれ変わることも可能です。

1.非常に幅広い補助金・助成金
人手不足と相まって、年々企業の採用コストは増加しています。新卒を1人採用するために5~60万円、中途採用のコストでは広告費用約227万円、人材紹介費用約561万円、1人当たりの求人広告費は約40万円にもなります。
出典:BIZHINT 採用コストより
一方で、補助金・助成金をうまく活用することで、負担を大きく減らすことができます。実は雇用関係の補助金・助成金はかなり幅広く、種類も豊富です。厚生労働省による「事業主のための雇用関係助成金」だけでも、8種類の雇用関係助成金があります。
- 雇用維持関係の助成金
- 再就職支援関係の助成金
- 転職・再就職拡大支援関係の助成金
- 雇い入れ関係の助成金
- 雇用環境の整備関係などの助成金
- 仕事と家庭の両立支援関係などの助成金
- 人材開発関係の助成金
- その他
このように人材採用だけでも、再就職支援・転職や再就職拡大支援・雇い入れ関係の助成などがあり、企業経営者なら必ずチェックしておきたいところでしょう。これらをうまく活用すれば、何十万円もの採用コストをかけたとしても、それを補ってさらにプラスにできる可能性もあります。では実際に、採用シーンでどのように補助金・助成金を活用していけばよいのでしょうか。次に活用方法をご紹介します。
2.補助金・助成金から採用ターゲットを決める
さまざまな企業の採用担当者に、どんな人材が欲しいかという話を聞くと、決まって同じような答えが返ってきます。
「年齢は35歳くらいまで。即戦力として長期で働いてくれて、自発的に行動でき、コミュニケーション力が高い人」
こうした人材は企業にとってぜひ採用したい、理想の人物像です。これに当てはまる人材は、求人市場で人気が高く、採用コストも高くなりがちです。最近では理想ばかりを追ったために、何十万円もコストをかけたのに採用できなかったという事例も発生しています。
その一方で、働きたいけど働けない、という層も存在しています。企業が採用活動を行う際のねらい目となる層かもしれません。国や地方自治体は、そうした層の雇用に対し、補助金・助成金を支払っています。企業は補助金・助成金の対象となる層をターゲットにすることで、より効率的な採用活動が展開できます。
では具体的にどんな場合に補助金・助成金が支払われるのでしょうか。
- 離職を余儀なくされた労働者を早期に雇い入れる
- 中途採用率の向上又は45歳以上を初めて雇用
- 東京圏から移住者を雇い入れる
- 高年齢者・障がい者・母子家庭の母などの就職困難者を雇い入れる
- 東日本大震災における被災離職者などを雇い入れ
- 十分なキャリア形成がなされず、正規雇用に就くことが困難な者を雇い入れる
- 建設業の中小事業主が若年者又は女性を建設技能労働者などとして試行雇用する
- 雇用情勢が特に厳しい地域で、事業所の設置整備をして従業員を雇い入れる
上記はごく一部です。このように多くのケースで、雇用内容によって補助金・助成金が支払われます。もちろん即戦力として活躍してくれる層が入社してくれれば、経営に大きなプラスです。しかし補助金・助成金を加味すれば、可能性はもっと広がるかもしれません。
たとえば、実務経験を持った人だけでなく、上記の対象となる幅広い層が採用できたとします。もちろん実務経験があるジャストな人材を採用すれば、年間で数百万円も売り上げに差をつけてくれるかもしれません。しかし、上記のような補助金や助成金を得て、採用時に幅広い雇用をしてみると、1年後に同じくらいの実力がついて会社に貢献してくれるかもしれません。
経験者採用ばかりにこだわって、多額の採用コストをかけるのであれば、採用コストを下げて補助金・助成金を狙ったほうが人材採用にはプラスになることもあります。
3.補助金・助成金で魅力ある職場作り
人材関連でもう一つ、考えておきたいのが職場改善のために補助金・助成金を使う、ということです。最近では新たな採用が厳しいので、大手企業を中心に 「離職者を減らす取り組み」 が進められています。
「働き方改革」 の試みというのはその一つといえるでしょう。人手が余っていた時代は、大量に離職者が出てもすぐに補充できました。しかし近年のように、採用コストが高くかつ採用できないなら、まず 「社員が辞めない環境」 を構築することが求められています。
ただし中小企業やスタートアップ段階の企業は、社内の体制整備にそれほどお金をかけられない場合もあります。そもそもどうやれば社員が辞めない魅力ある職場になるかわからない、という経営者や人事担当者もいらっしゃるのではないでしょうか。そうした時に活用したいのが 「雇用環境の整備関係等の助成金」 です。
たとえば、人事評価制度や賃金制度の整備・研修制度・健康づくり制度・短時間正社員制度・300人以下の中小企業における女性が活躍しやすい職場環境を整備、などに活用できます。これらの補助金・助成金は職場環境を改善し、離職率の低い職場を実現してくれるでしょう。取得できれば、社内の環境整備が進み、結果的に離職率を下げることにつながります。
もう一つ、魅力ある職場作りでぜひ活用したいのが 「キャリアアップ・人材育成関係の助成金」 です。人材開発関係の補助金もまた、非常に充実しています。研修制度の整備や、外部研修の活用の際に活用できるものも数多くあります。働いて給与を得るのだけでなく、この職場では研修などでキャリアアップができる、となれば社員のモチベーションにもつながります。雇用環境の整備等の補助金と共に、ぜひ活用してください。
4.人材の多様化と助成金
会社のスタートアップ時や会社の規模がまだ大きくないときなら、似たようなスキルの人材のほうが経営はスムーズに進むこともあるでしょう。皆で同じ方向を向き、走ることで、大きな力を発揮できます。
しかしある程度会社の規模が大きくなり、事業が拡大しはじめると、次に考えるのは人材の多様化です。たとえば経済産業省では 「ダイバーシティ(人材の多様性)経営企業100選/100選プライム」を実施し、ダイバーシティ推進を経営成果に結びつける取組みを表彰しています。
中小企業では、自分達とは関係ないと思って敬遠するかもしれませんが、実は人材の多様性は企業にとって大きなプラスとなることもあります。とくに企業競争が激しく、ニーズの変化が激しい市場では、同質な能力よりも多様な能力を持つ人材が武器になります。積極的に幅広く人材を受け入れることで、時代にマッチした競争力を確保することが可能です。
人材の多様化と聞くと難しく思えますが、要は先ほどご紹介した人材採用のターゲットを広げるのも一案です。たとえば今まで男性が中心だった職場に、育児や介護と仕事が両立できる社員を雇う、今いる社員が育児・介護に参加できる環境を整備する。それだけでも人材の多様化につながります。
この記事を参考に補助金・助成金を取得する計画を立ててみませんか。その計画とともによりよい人事戦略を採ることで社内の多様化を進め、より強い基盤を作り上げることが可能になるはずです。ぜひお役立てください。
※最新の情報はHPにてご確認ください。
監修:長谷川祐也(中小企業診断士/経営学修士)
執筆:リカル
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