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連載:第14回 組織作り その要諦

顧客3万社、営業12名。売上を追わない営業部門と社長が重視する、最も大切な指標とは

BizHint 編集部 2019年10月15日(火)掲載
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上場企業の約37%が利用する、シェアNo.1のプレスリリース配信サービス「PR TIMES」を運営する株式会社PR TIMES。同社では創業以来「少数精鋭」が徹底されています。「社員のために大阪支社を3ヵ月で閉鎖」「営業部門は売上を見ない」など、独自のエピソードの裏にある人材・組織への考え方について、代表取締役社長山口拓己さんにお話を伺いました。

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【プロフィール】
株式会社PR TIMES
代表取締役社長 山口 拓己 さん

1974年愛知県生まれ。96年、山一證券入社。その後アビームコンサルティング等を経て、06年、ベクトルに入社。取締役に就任し、上場準備責任者としてIPOへ向けて指揮を執る。2009年、PR TIMES代表取締役就任。2016年、東証マザーズへの上場。2018年、東証一部への上場を果たす。

大阪支社は3ヵ月で閉鎖。社員のため、拠点は東京だけに

――3万社の顧客に対し、社員は61名という、少人数での運営が特徴的です。

山口拓己さん(以下、山口): 社員はアルバイト含めて61名ですが、派遣契約や業務委託のフリーランスも含めると、約90名の体制になります(2019年9月)。現在、お客様は3万社以上になりますが、おかげさまで直近3か月でも、2000社以上増加しています。

──そのうち、営業メンバーはどれくらいでしょうか?

山口: 正確には12名です(2019年9月)。ただ、その12名ですべてのお客様と接点を持つ、というわけではありません。というのは、私たちは営業メンバーだけが営業活動をしているわけではないからです。お客様からのファーストコンタクトは、ほとんどがWEBサイトから。そのお客様に無条件に「営業担当が付く」のではなく、 お問い合わせの内容に対して「社内の誰かが担当する。適切なご案内をする」スタイル だからです。

例えば、ITリテラシーの高いお客様は私たちがサポートすることなくサービスを利用されます。こういった場合は、営業メンバーは特に接点を持ちません。また、お問い合わせの内容によっては毎週1、2回開催する「勉強会」へのご参加を案内することもあります。

もちろん「サービスを詳しく知りたい。来社してほしい」とのご要望には、営業メンバーも含め適切なスタッフがお伺いして説明します。

──お客様の要請があれば、地方でも訪問するのでしょうか?

山口: 地方のお客様であれば、私たちが東京を拠点にしていることを説明した上でオンラインミーティングを行います。オンラインミーティングにご理解があるお客様は本当に増えてきました。もちろん、それでも「来社してほしい!」と仰る場合は訪問します。「直接会って話を聞きたい」というお客様は、私たちと同じように「プロモーション」を重要なこととお考えだからです。

──地方企業の訪問・営業効率についていかがでしょうか?

山口: 実は2014年に、関西のお客様への営業効率を上げるために、大阪支社を開設したことがありました。入念に準備を進め、きれいにデザインした事務所も構え、20代の社員4名の住居もしっかり手配して、東京からの異動という形で。しかし 大阪支社は、3ヵ月で閉鎖 しました。

理由は、その 社員4人が4人とも「東京に帰りたい」と言ったから です。もちろん、異動前は大阪でがんばってくれる意気込みだったと思います。しかし実際に異動してみると、いわゆる「生活の基盤」がないことが大きなストレスだったようです。いつもどおり家族と話せない、友人とも気軽に会えない、なじみの場所もない……。異動ですのでそれは当たり前のことなのですが、 果たして、本当にそのようなストレスをかけてまでやることなのか? と。

そこですぐに、大阪支社の閉鎖を決めました。また、これを教訓として、今後拠点は「東京のみ」として事業を進めることにしました。当社は少数精鋭にこだわっています。一人の社員は様々なことを担当しますし、 当社にとって何よりも大切なのは社員です。そこに思い至った時に、支社をつくることはマストではなかった と気づきました。

自身のマネジメント力を鑑みると、少人数の組織のほうが「良いチーム」になれる

──少人数精鋭にこだわる理由についてお聞かせください。

山口: 当社の設立は2005年ですが、今の主力事業を立ち上げたのは2007年。当時、私たちがもっとも苦労したのが「採用」です。 本当に人材が採れませんでした。 ですから、結果的に少人数ですべての業務をカバーするしかありませんでした。部署もなく、営業も営業だけをやっていれば良いというわけではなく、サポートもやるし、サービス改善もやりました。そのため、 結果的に少数精鋭……一人一人がなんでもやる組織になっていきました。

もちろん人材はほしかったのですが、その一方で 「私たちは少人数のほうが、良いチームになりやすいのでは?」という感覚 があったのです。良いチームの条件はいくつかあると思いますが、私たちが考えるひとつの要素は 「共通の目標をもって本気で挑む」 ことです。共通の目標をもって、という部分は人数が多いと当然ブレやすくなります。もちろん、大人数でもブレない組織もあるかと思いますが、私たちにはそのようなマネジメント力はありませんでした。その考えが、今も続いています。

また、少人数の方が各自の能力を高められ、相互信頼・相互補完・相乗効果が生まれやすいとも思っています。機能やスキルごとに都度人材を採用していると、そういったことがなかなか生まれづらい。 「誰かできる人いないかな?やってみよう」という発想がまずあります。

当社は2019年に会社のバリューを作り直し、 「共通の価値観を持つ」 としました。これが、 小さな良いチームの条件 だと考えています。現状のマネジメント力と照らした上でこのバリューを実現しようとすれば、組織・人数の大幅な拡大は有効な選択肢に入りません。

──事業拡大を考えると、営業を増やすという選択肢もあるのでは?

山口: たしかに、営業を2倍3倍に増やせば、新規顧客も2倍3倍で増えていくかもしれません。しかし、そういった日はいずれ来るもので、その過程は穏やかで良いと考えています。当社の成長は設立のタイミングを鑑みると、他のそうそうたるIT企業と比べ緩やかです。もちろん、前述した私たちのマネジメント力に帰結する部分もあるのかもしれませんが、 何より優先しているのは「共通の価値観を持つ」チームづくり です。

人材は常に募集しています。しかし、例えば欠員補充の場合でも、重視するのはそれを埋める機能・スキルではありません。あくまで 「精鋭になっていただける方かどうか」「価値観を共有いただける方かどうか」 です。これはこれで、なかなか難しいものなのですが。

売上を追わない営業部門が追う、もっとも大切な指針

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