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連載:第13回 組織作り その要諦

ベイスターズの躍進を支え続けたマーケティングチームの心得。「それしかなかった」ものとは

BizHint 編集部 2019年10月1日(火)掲載
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平日、週末問わず3万人以上の人が本拠地・横浜スタジアムに集い、一つひとつのプレーに一喜一憂する。今や日本で最も愛されるスポーツチームの一つとなった「株式会社横浜DeNAベイスターズ」の日常です。現在同社はデータを駆使したマーケティングによって、スポーツ界に留まらず注目を集めています。2019年シーズンは主催試合72試合目で、球団創設以来最多となる観客動員数228万人に到達しました。しかし、ここまでの道のりは平たんなものではありませんでした。期待に応えられずファン離れが加速した時期、親会社の変更など、さまざまな変遷をいかにして乗り越えたのか?同社経営戦略・IT戦略部長の林裕幸さんにお話を伺いました。

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【プロフィール】
株式会社横浜DeNAベイスターズ
事業本部 経営戦略・IT戦略部長 林 裕幸 さん

2009年IBMビジネスコンサルティングサービス株式会社(現・日本IBM)に入社。2013年株式会社横浜DeNAベイスターズ入社。事業計画策定、球場改修計画(「コミュニティボールパーク」化構想)策定、マーケティング分析・顧客戦略策定、などを担当。2015年からグッズに関する戦略策定、販売業務を統括。2017年より経営戦略・IT戦略部部長を担当(現任)。マーケティング・短期および中期の球場改修計画立案や事業計画立案に加え、横浜スポーツタウン構想や球場外拠点「THE BAYS」等の新規事業の推進、IT戦略策定などを手掛ける。

球団運営を黒字化せよ。ビジネスの構造変化、球界再編の荒波を受けて

――DeNAベイスターズはプロ野球界の中でも様々なマーケティングのチャレンジをされていますね。

林裕幸さん(以下林): そうですね。自分達の中で、現状に甘んじる事なく常に変化していこう、お客さんに喜びと体験をどんどん提供していこう、常にチャレンジし続けようという意識が根底にありますので。社員の間でも 「ベイスターズは新しいことに常に取り組んでいる、と思われるようにしよう」 という話をしています。これはスポーツ界だけでなく、エンターテイメントや、他の業界含めてです。

――そのような意識の背景にはどのようなことがあるのでしょうか?

林: 2000年代から2010年の初頭にかけて野球界全体のビジネス構造が変化し、球団の再編が進み、時代やお客様のニーズなど、プロ野球チームを取り巻く環境が大きく変わっていきました。球団を黒字化すれば、チームの育成・強化のための投資が可能となり、さらにはお客様の喜ぶサービスも提供できる。『まずは球団単体でも黒字化できるようなビジネスモデルを構築しよう』という考え方が徐々に広がっていきました。

ベイスターズで言うと、2012年のシーズンには親会社がTBSからDeNAに変わるなど、本当に激動の時期でした。そのときの年間観客動員数が大体100万人ぐらいです。今の半分ほどの観客数で、決してスタジアムが賑わっているとは言えない状況でした。そういった中で、 このままだと球団は存続できない、同じことを続けていては生き残れない、変化していかなければいけない、という危機意識が会社全体に広まっていきました。 親会社が変わり、また企業風土が新しく変化する中で、『これまでのやり方だけではなく、新しいことに挑戦していかなくてはダメだ』という意識を社員全体で共有できたことは大きかったのではないかと考えています。

失敗してもいい。変わろうとする、挑戦する姿を見せ続ける。それしかなかった

横浜スタジアム周辺では、楽しいイベントが連日開催されている。

――親会社が変わって、組織内ではどのような変化がありましたか?

林: 何より、球団単体で黒字化していくという『目標』が設定されました。そのためにはお客様にお越しいただかないことには始まらない。では何をすれば?という所からのスタートでした。そこで 「どんな方が来てくれているのかを、まずは把握しよう」と、お客様についてのデータを集めることにしました。

とはいえ、どうやってデータを取れば良いかもわかりません。データを取る仕組みがすでにあるわけでもありません。まずは球場に足を運び、お客様の年齢層や家族構成などを記録したり、試合終了後にどのくらい人が残っているかを確認するなど「データを取る」ために、できることは何でもやりました。

――そういった地道なデータも加味しながら、マーケティングのアイデアに落とし込んでいくわけですね?

林: はい。しかしもう一つ、ある意味 データの取得より重要だったと思うのは、そのアイデアを実際に形にしていくことです。 親会社が変わった当時は観客動員も低調でした。我々としては「後は上がるしかない」「失敗しても、新しい施策を打ち続けなければ上向かない」という意識がありました。 一方で、 『新しいことに挑戦する』という姿勢を様々な施策を通じて発信し続けることで、ファンの皆様にも『ベイスターズは変わろうとしている』と伝わっていくはず だと考えていました。逆に言えば、 それしかありませんでした。

「まずはチャレンジ!失敗したらそのデータを次にいかす!」ということを繰り返しました。 チャレンジを止めてしまうことが何よりの失敗 という認識です。

――結果的に失敗した施策もあったわけですよね?

林: そうですね。球場内でシャボン玉を飛ばす演出をした「シャボン玉ホリデー!」というイベントでは、すぐに弾けてしまうシャボン玉がお客様の食べ物や飲み物に入ってしまいクレームを沢山いただいたこともありました。

最初のころは「とりあえずやってみよう!」として、当たり外れも大きかったのですが、都度データを取って振り返りをきちんと繰り返すうちに我々の経験値もあがっていきました。徐々にではありますが、観客動員数にも反映されてくるようになり、成功確率が上がっていきました。 新しいことに挑戦し続けることで、お客様との信頼関係が積みあがってきていることも大きい と思います。

――マーケティングの施策について、経営側から何か言われることはありますか?

林: 施策の内容については基本的に無いですね。当然その施策を打つ前には、経営層とディスカッションをして決めていきます。施策の実施後は振り返りを必ず行い、失敗した場合は、 失敗に目を向けて「なぜ失敗したのか?」というよりは、その結果を「どう次に生かすのか?」という視点で話をしています。

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