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連載:第13回 人材育成 各社の取り組みを追う

新規出店はスタッフのため。人を育て「次」を用意し続けたら美容院の枠からはみ出した

BizHint 編集部 2019年10月10日(木)掲載
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「一生、来ていただける美容室」を目指して誕生したデレディール。フランチャイズを含め、これまでに7店舗を展開していた同社は今年、インドネシア・バリ島にも進出しました。同社の「一生、来ていただける」という価値の追求は、店舗の立地から集客施策、スタッフ教育、社内ルールにまで及びます。今回は、美容師の可能性を広げるキャリア施策やスタッフ教育、好かれる美容師の条件、そして徹底したルール運用について、代表取締役の小山一彦さんに伺います。

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【プロフィール】
有限会社デレディール
代表取締役 小山一彦さん

大阪府出身。高校卒業後、美容専門学校入学。24歳で大阪狭山市の住宅街に美容室をオープン。美容室、移動美容室、エステサロン、アイラッシュサロン、ネイルサロンを手がけ、フランチャイズ店を含め、関西とインドネシア・バリ島に8店舗を展開。美容師育成のための職業訓練校も開校。

美容師は一生やれない。社内に多くの選択肢、キャリアアップの場を

ーー「一生来ていただける美容室」にするために、スタッフとどのような関係を築いていらっしゃいますか?

小山一彦さん(以下小山): スタッフにはできるだけ長く働いてもらいたいと思っています。残念な話ではありますが、 一般的に美容師は一生やれる仕事ではない のです。立ち仕事ですし、体力が衰えたり、体を壊したら続けるのは難しい。多くの美容室では体も心も元気な20年間、美容師を続けられます。しかし、それがなくなったらどうでしょう?美容師を、またその美容室を辞めなくてはなりません。これはもったいないですし、残念なことです。そこで当社が進めているのは 「彼らの次のステージやポジションを作っていくこと」 です。これは、当社が結果的に事業領域を広げていることにも関係します。

美容室としてスタートしましたが、現在当社には美容師がいて、エステティシャンがいて、レセプショニストがいて、アイリストがいます。いわゆる「美容室」の範疇にはおさまっていません。美容師として入社し、自身の店を持つことを目標にがんばってもらっても良いですが、それが全てではないのです。実際、足が悪くリウマチになったスタッフは事務職と美容師を兼任していますし、スタイリストをしながら、エステティシャンをしているスタッフもいます。

例えば、今はパートとして受付で働いていても、同世代のパートのエステティシャンを傍で見ていて、「自分も」と思ってチャレンジすることができます。50歳を超えた方が第二の人生として、当社でエステティシャンに挑戦し活躍しています。こういった、自身の可能性を広げる方々のためにも、美容室だけでなくエステなどにも事業を拡げ、ポジションや仕事を広げていっています。

当社の社員が自身のキャリアを考える時、 できるだけ社内に次のステージを用意しようと考えています。

成長したスタイリストのために新規出店。次のステージを作るのが社長の仕事

職種やポジションごとに「次のステージ」が図式化されている(デレディール提供。画像はぼかしています)

ーー「次のステージ」とは具体的にどういうものでしょうか?

小山: たとえば、この表(上画像)のようなものです。職種やポジションなど様々な指標で、スタッフ一人ひとりにあったものを常に考えています。人材教育というよりは 「それぞれのスタッフの、そのステージでの賞味期限」 とでも言いましょうか。

もし、当社でそのステージでの賞味期限はあと5年くらいかな?という人のために次のステージを作ったら、もちろんその人はそこに行きます。 次のステージを作ることで、勤続年数が5年から10年に伸びたとしたら、それだけでも大成功です。

ーー 能力が高いスタイリストにはどのようなステージを用意するのでしょうか?

小山: とある店舗に実力があるスタイリストがいました。しかし、その店長があまりにすごくて、そのスタイリストの売上は頭打ちになっていたんですね。これはもったいない……となった時に、 当社はこのスタイリストのために新規で店を出しました。 実力があっても店長を抜けないとなると、当社で働くのが嫌になってしまいますから。そうなる前に次のステージを用意したのです。

スタッフの次のステージを作る。これが僕の仕事です。 仕事をする能力も大事ですが、一番は一緒にいたいかどうかで決めます。そのスタイリストのために作るお店にも、もちろん適切なスタッフを「次のステージ」として配置します。結果、お店も繁盛します。

間違ってはいけないのは「会社を、店舗を大きくすることが先にあるわけではない」ということです。 当社でスタッフが成長し、彼らが羽ばたける場所を作っていたら結果的に大きくなっていた ということです。

ーー他にも、スタッフのために作った美容室はありますか?

小山: はい。堺市にある美容室です。社員は店長含め3名。その他のスタッフはパート7名です。何より特徴的なのは、 美容室なのに日曜・祝日が定休日 ということです。この美容室はそれまで勤めてくれた社員が「社員ではなく、パートとして働きたいけど、忙しい日曜日に仕事を休むのは気を遣う」「祝日は子どもといたい」ということで作りました。もちろん採算はもちろん取れています。

移動美容室バスは育成のために。お客様を相手にする心を鍛える

福祉施設などを訪問する移動美容室バスにて。すべて自分の力で対応するしかなく、接客や心を鍛える場に

ーーバスでの移動美容室もやられています。反響はいかがですか?

小山: おかげさまで盛況ですが、おそらく当社のバスの目的は他の美容室とは異なっているかと思います。というのも、多くの美容室はバスで売上を作ろうとします。しっかりと一線級のスタイリストを乗せて、訪問して髪を切る。 なぜか?お店がうまく行っていないから です。

一方、 当社の移動美容室は教育・育成の一環 として機能しています。いわゆる「お客様を持てる美容師」を育てるためです。その結果、店舗での売上がついてくれば良いという考えです。

多くの美容室にはカリキュラムがあり、技術レベルに応じて給料は上がります。テストは受かっているしカットモデルも切っている。しかし、お客様を相手にするとうまく行かない美容師は数多くいます。 すごく乱暴な言い方をすると、強い気持ちがないからお客様を前にひるんでしまい、コミュニケーションもうまくいかず、髪を切れなくなってしまう わけです。これは当社も例外ではありません。

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