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連載:第6回 組織作り その要諦

雅叙園復活のカギ「作業員ではなくホテルマン」。 圧倒的なハードの魅力を伝える、人・ソフトの再生術

BizHint 編集部 2019年4月26日(金)掲載
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日本初の総合結婚式場として名高い『目黒雅叙園』。2017年4月に『ホテル雅叙園東京』として生まれ変わりました。その立役者が、2015年11月に社長に就任した本中野真氏。当時、婚礼事業は右肩下がりで2014年度には経常赤字を計上。しかし、社長就任後にホテルとしてのリブランディングを進め、婚礼を含む宴会、宿泊、レストランすべての部門を強化。2017年には4.7億円の経常利益を上げ、見事V字回復に成功します。約2500点にも及ぶ美術品の魅力を最大限に伝えるための改革を敢行し、客室も「和敬清心」をコンセプトにした内装へ大幅リニューアル。平均客室単価は改装前後で、2万円台から約6万円に上昇しました。「次に目指すのは5スターホテル」と断言する同氏に、その復活劇の背景を伺いました。

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本中野真さん

日本大学法学部卒。1987 年4月(株)ニューオータニエンタープライズ入社。1996年1月㈱ヒューマニアエンタプライズ(ホテル日航東京)入社。2003 年宴会部長に就任。婚礼部門を中心とした部門横断的改革に着手し、婚礼実施組数年間1000 件達成の礎を築く。2012 年1月(株)JALホテルズ転籍、ホテル日航東京総支配人に就任。2015年11 月(株)目黒雅叙園 代表取締役社長に就任。


まず、想いを伝える。過去のリスペクトから、強みを再定義

――社長就任時からリブランディングの話はあったのでしょうか?

本中野氏(以下、本中野): そもそも目黒雅叙園は、専門結婚式場としての事業が中心でした。少子高齢化とともに婚礼事業が縮小していく中、「グループ事業の中心になるようなブランドを再構築して、発信できるような施設にしてほしい」というのが、就任時にいただいたリクエストでした。当初は、それがイコール、ホテルというわけではありませんでしたが、目黒雅叙園を価値あるものとして打ち出していくためには、ブランドの再構築はやはり不可欠なものでした。

その時、肝に銘じたのは「今までやってきたことをリスペクト」すること。それを否定してしまうと社員も不安になるし、悲しむお客様も出てくる。 第二創業のつもりであっても、創業から続いている良い部分は大事にしよう と思っていました。だから「基本的には誰も辞めさせることはない」というメッセージを発信したのです。

――就任当時の社員の方の意識はいかがでしたか?

本中野: どちらかというと、ポジティブなマインドではなかったと思います。トップダウンで進むオーナー企業だった側面もあり、与えられたことを日々ルーティンでこなす、といった印象でした。リーマンショックや震災、また業績の悪化から負のスパイラルに入り、そこから立ち直れていないようでした。スタッフは豊富な経験もあり、自分の意見をきちんと持っているのに、それを表に出して言えないような雰囲気を感じました。

――まず取り組まれたことはどんなことでしょうか?

本中野: まずは、どんな施設にしていきたいかという想いを、私自身の言葉で発信しました。そして、ビジョン、ミッション、バリューやCI(Corporate Identity)について幹部と議論を重ねました。「過去にお客様から言われた言葉」「パートナーの方々の想い」「社員の想い」など、いろいろな想いを並べ、 『大切な人と集う特別な場所、伝えたくなる非日常』 というCIを作りあげ、想いの共有を目指しました。

参加したのは幹部だけでしたが、「こんなに素晴らしい施設だったんだ!」「ああ!こんなこともあったっけ!」「あの時、これはダメって言われたなぁ!」など、今まで蓋をされていた過去の出来事や、その時の想いを整理し、言葉にしていきました。これは我々の『強み』を見直していくことにも繋がりました。2015年11月に着任し、翌年1月には、それらを一枚のカードにして社員全員に配りました。

――想いの共有により、改革が進めやすくなったという手ごたえはありましたか?

本中野: いいえ。作成したCIを浸透させ、いかに具現化していくかが問題です。そのためにはスピードが重要で、いったん「3年で何ができるか」を考えました。それを年次でのアクション計画に落とし込み、いかに具体的なものを積み重ねていくか?を考えました。 課題はハード、ソフト両面にありました。ハード面では、歴史的な建物や素晴らしい美術品が揃う一方、デッドスペースをいかに収益を生むスペースに変えられるか?ソフト面ではやはり従業員のマインド・スキルです。これらがバランスよく調和し積みあがっていった結果として、『ブランド』ができあがってくるものと考えていました。

――CIの「具現化」はどう進められたのでしょうか?

本中野: まず、「伝えたくなる非日常がどこにあるのか」ということを皆が認識することから始めました。幹部ですら十分に理解できていなかったのです。素晴らしい施設や美術品を持っているのに、その価値を知らない。誰がいつ描いた絵画なのかもわからない。

そこでまずは我々 幹部が率先して、毎日地道に社員に声をかけ質問していきました。 もちろん我々もわかりません。しかし、それを繰り返すことで社員は自ら調べてくれるようになりました。そのうち、マーケティングチームがそれらの美術品の情報をまとめてあげ、社内に共有してくれました。そしてそれを活用することで、以前からあった美術品のブランドブックも再編し、海外向けにも発行することができました。

ビジョン、ミッション、バリュー。これらを浸透させ、日々の行動で具現化するために、年4回の研修を行い全社員が参加しています。

求めたのは「作業員」ではなく「ホテルマン」。必ずいる「本当のお客様」の心を掴むために。

全社員に配布されるCIのカード。朝礼での唱和など、部署ごとで定着が図られる

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