「優秀な人材を育てる」だけではダメだった。リーダーが気づいた、個人に依存しない組織づくり4つの手順
手塩にかけて育てた人材ほど会社を去り、そのたび組織は崩れる……。企業の海外進出支援などを手がける東京コンサルティンググループ代表の久野康成さんは、かつての組織をこう振り返ります。失敗を重ねるなかで久野さんは「優秀な人材を育てれば、組織は強くなる」という考えが思い込みだったと気づきます。以降10年にわたり組織改革に取り組んだ結果、同社は一部の優秀な人材に頼る組織から抜け出しつつあります。崩壊状態に陥っていた拠点では、特定の誰かに頼らない形に立て直し、売上が8倍へと成長。組織が変わるのと並行して業績も堅調に推移し、経常利益率が28.8%と高い水準をキープしています。久野さんが失敗の末に見出した、人に依存しない組織をつくる「仕組み化」の進め方とは。詳しく伺います。
「優秀な人材を育てれば、組織は強くなる」は経営者の幻想。失敗の末たどり着いた「仕組み化」4つの手順
――創業から現在に至るまで、組織づくりの面ではどのような道のりを歩んでこられたのでしょうか。
久野 康成さん(以下、久野): まず、私は1998年に公認会計士事務所を創業しました。会計事務所といえば即戦力の経験者を採用するのが常識。でも私は、 経験ゼロの人材をイチから育てることにこだわったんです。 自分の頭で考え、自分の足で立てる人材を育てたいと考えたからです。
2006年に海外で、日本企業のグローバル展開を支援する事業をスタート。特にインドで事業が軌道に乗り、アジアに拠点を広げていきました。ところが、 そこから人をめぐる問題が次々と起こり始めたんです。
当時、現地の運営は赴任したトップに任せきりでした。トップは、公認会計士などのプロフェッショナル。周りはそれを支えるアシスタントで、仕事の進め方も判断も、すべてトップ一人の頭の中にありました。だから、 その人が独立すると、誰も代わりができず、拠点ごと一気に崩れてしまうんです。 中でも苦い記憶として残っているのがタイです。送り込んだ赴任者が3人続けて定着せず、形になったのは4人目のときでした。彼のもとで年商5,000万円規模まで育ったものの、彼が独立すると売上はみるみる半減。お客様も一社、また一社と離れていきました。
一番こたえたのは、後継者のことです。創業期から苦楽を共にした幹部に、グループ会社の経営を任せました。ところが彼は独立の道を選んだ。次こそはと望みをかけた別の幹部も、やがて同じ選択をしました。そのときのショックは、今でも忘れられません。 期待をかけて育てた人ほど、力をつけて外へ出ていってしまうんです。
これらの問題は、 起きた場所も時期も違うのに、原因は同じでした。私自身が「優秀な人材を育てれば、組織は強くなる」と信じ、人に頼る経営をしていたことです。 人に頼っている限り、その人が抜けた瞬間に組織は崩れてしまう。何度も同じ失敗を繰り返して私がそう気づいたのは、今から10年ほど前のことです。
そこから、組織づくりの軸を大きく切り替えました。 それは「仕組み化」です。仕事の品質を、個人の能力ではなく仕組みで保つ。そして、人が入れ替わっても揺らがない、誰が辞めても回る。そんな組織の構造をつくることです。
以降、取り組みを続けてきましたが、まだまだ道半ば。それでも、 一人のトップに頼り切る状態からは抜け出しつつあります。 それがはっきり形になったのが、タイの拠点。崩壊状態だった拠点を、 トップが代わっても同じ手順と基準で仕事が回る形に立て直したことで、今では売上が8倍に。 海外で最大の拠点になりました。会社全体でも、組織が変わるのと並行して業績は堅調に成長し、経常利益率は28.8%と高い水準を保っています。目指してきた組織の姿に、少しずつ近づいていると感じます。
――特定の誰かに頼らない組織をつくるために、具体的にどのように「仕組み化」を進めればよいのでしょうか。
久野:そこには、4つの手順があります。 それは、