主体的組織へ10年にわたる変革の全段取り。指示待ち組織が最初に体験すべきこと

「本部が決めたことに店舗は従う」「店舗は自動車の販売に専念する」。これは日本全国のディーラーで当たり前に見られる組織構造です。しかし、事業存続の危機からこの常識を打ち破り、他業種への事業拡大、観光・地域振興、内閣府へのAI提案などに多角的に事業を拡大しているのが、トヨタカローラ香川株式会社です。そこには、数年前まで待ちの姿勢で自動車を販売していた社員たちが、自ら手を挙げ新規事業に取り組み、様々な企業・団体とのアライアンスを進める光景がありました。なぜそんな変化が起きたのか?その「受け身から、主体的へ」という組織変革の10年にわたる段取りついて、代表取締役社長の向井良太郎さんに伺いました。

ファンを作るために、社員の主体性は欠かせない。指示待ち組織が最初に体験すべきこと

――貴社は近年「主体性」のある組織づくりを志向されています。どのような背景があったのでしょうか?

向井良太郎 社長(以下、向井): 組織改革の必要性に迫られた大きなきっかけは、2020年に実施されたトヨタ販売店での「全車併売」への移行です。

それ以前は「トヨタ店・トヨペット店・ネッツ店・カローラ店」と販売店のチャンネルが分かれていて、それぞれの店舗で扱う車種が違いました。全車併売になると、お客様はどの販売店に行っても同じ車が買えるようになります。

これは当社にとって 「何もしなければ、お客様を奪われる」ことを意味しました。 というのも、トヨタ店にお客様が流れることが目に見えていたからです。トヨタ店はレクサスを取り扱っており、富裕層や法人のお客様を多く抱えていました。同じ店舗でカローラもヤリスも買えるとなれば、家族の車を同じ店舗で買うケースが増えることは明らかでした。

ここで問われた本質的な問いが「お客様が当社を選ぶ理由」です。 それがなければ、当社の事業は縮小を逃れられません。

では、お客様がディーラーを選ぶ理由は何か?私は4つしかないと考えています。「利便性」「安さ」「惰性(なんとなく)」「好き(ファン)」です。

このうち、利便性は店舗の立地によるところが大きいのですぐの対応は難しい。惰性は競争できる類のものではありませんし、安さについては積極的に進めるべきものではありません。そうなると、お客様の「好き」を取りに行く。つまり、ファン作りを目指すことが残された唯一の道でした。

従来の当社の業務は基本的に「車を買いに来たお客様に、車を販売する」というもの。しかしそれでは差別化はおろか、ファン作りはできません。 志向すべきは「車を売る以外に、お客様に何をご提供、ご提案できるか?」です。

それを見据え、当社は事業と組織の両面で改革を進めていきました。事業面では自動車・カーライフに留まらないサービスを提供するための異業種・異分野展開を推進。

一方で、それをお客様に届ける社員が「車を売るだけ」という意識では、現状と変わりません。

社員に必要なマインドは「お客様に寄り添って、喜んでいただけるいろいろな提案をしたい」という類のものに変化。そのためには「主体的に仕事に向きあう」ことは不可欠でした。

もちろん、社風や社員のマインドがすぐに変わるわけはありません。実は、私が入社した2012年ごろから10年以上にわたって段取りを組み、またタイミングを見計らいながら組織改革を進めてきました。それが今、ようやく形になってきたところです。

事業構造的に「受け身・指示待ち」が染みついていた社員たちが大きな変化を乗り越え、社内の様々な機会で手を挙げてチャレンジしてくれるようになり、業績面でも直近2年で過去最高を連続で更新しています。

――10年以上かけ、組織を主体的に変えていった施策や、その段取りについて教えていただけますか?

向井: 私は2012年に入社し、取締役営業本部長という立場で組織改革の旗を振り始めました。

そこで最初にやったことは、決して全社員に「主体性を求める」とアナウンスすることではありません。

まずやったことは、店長を集め、 それ以前は決してなかった「たった一つの体験」をしてもらうことでした。 それは、