「カリスマ的経営」からの卒業。社員の主体性を引き出したリーダーが徹底した、二つのこと
「一人のカリスマが引っ張る組織ではなく、社員とともに前へ進める組織にしなければならない」。シャボン玉石けん代表取締役社長・森田隼人さんは、就任当時の決意をそう語ります。30歳で経営を引き継いだ直後、圧倒的なカリスマ性を持つ先代が急逝。多くの社員とその家族の生活を守らなければならないという重圧の中、一人のリーダーに依存しない組織づくりに向けて、二つの改革を断行しました。その取り組みは、組織の風土を根底から変えるものでした。現在では現場から次々と新たなアイデアや挑戦が生まれ、若手社員が自ら考え動く主体性あふれる組織へと進化。それにより、2026年2月期には過去最高売上を達成しました。森田さんが徹底してきたこととは。詳しく伺います。
「自分一人では何もできない」危機感を抱いたリーダー。社員の主体性を引き出した、二つの改革。
――貴社は「無添加石けん」のパイオニアとして知られています。老舗企業でありながら、社員一人ひとりが主体的にアイデアを生み出し挑戦を続ける、チャレンジングな組織だそうですね。
森田 隼人さん(以下、森田):おかげさまで、当社は創業116周年を迎えました。現在は、現場から「こんなことをやってみたい」というアイデアが次々と上がってくるように。自ら考えて動ける社員が、明らかに増えたと感じています。 これは一例ですが、若手主体のTikTok動画制作、新たな販売手法やクリエイティブ面での挑戦、現場主導で立ち上げたオンライン工場見学などなど……。私では思いつかないような取り組みが、現場から次々と生まれています。彼ら彼女らが力を発揮してくれたおかげで、 2026年2月期には売上高が初めて130億円を超えました。
――「自ら考えて動ける社員が増えた」そうですが、過去はどのような組織だったのでしょう?
森田: 少し背景をお話すると、私は父が経営するシャボン玉石けんに、2000年に入社しました。先代は「無添加石けん」の製造・販売への切り替えを決意し、17年間の赤字経営にも耐え、その普及に努めた人物。非常にカリスマ性があり、社内外で大きな影響力を持っていました。私は2007年に社長に就任し、先代は会長に。そこから、 二人三脚で会社を牽引していくつもりでした。しかし半年後、先代が急逝してしまったのです……。
私は当時30歳。多くの社員とその家族の生活を守らなければならない。 また、シャボン玉石けんには、無添加石けんがまったく売れなかった時代から支えてくれた、大切なお客様がいます。お客様の期待に応えるためにも、この会社の未来を作っていかなければならない。私は、大きなプレッシャーに押しつぶされそうになっていました。
自分一人では何もできない。これから先は、強烈なカリスマが引っ張る組織ではなく、社員とともに会社を前へ進めていく組織にしなければならない。それが、私が描いた次のシャボン玉石けんの姿でした。
組織を見回してみると、父のつくった企業理念「健康な体ときれいな水を守る。」はしっかりと社員たちに浸透しており、一人ひとりがその理念の実現を目指して自らの業務に邁進していることに気づきました。一方で、当時のシャボン玉石けんは、1991年まで続いた赤字経営の影響で中堅層が少なく、30歳以下の若手社員が中心でした。70代だった先代とは大きく年齢も離れており、 若手が自発的に意見やアイデアを発信していくという雰囲気にはなりにくかったと思います。こに、向き合うべき課題があると感じました。
そこで、 私は二つの大きな改革を実行しました。それこそが社員の主体性を育み、自ら考えて動ける組織へと変えた転換点だと思います。
――二つの改革。それは、何だったのでしょうか?