部下を「育てよう」としてはいけない理由。育成疲れの管理職を救う、3つの視点
「教えても教えても、なぜ育たないのか」。研修を受けさせ、OJTを重ね、1on1を続けても、部下が思うように動いてくれない——そんな「育成疲れ」を抱えている管理職は少なくありません。これまで300社・5万人以上の支援実績を持つ組織コンサルタントの白井旬さんは、「部下を育てなければならない」という思い込みこそが、悩みの根源だと語ります。管理職に必要なのは「部下を育てる」ことではなく、部下が自然と「活躍人材」そして「自律人材」へと変わっていく「状態を整える」こと。白井さんはそのために必要な「3つの視点」があると言います。詳しく伺いました。
「能力さえ上げれば部下は活躍してくれる」という誤解
――多くの管理職が部下の育成に悩みを抱えています。
白井: そうですね。私も多くの企業の支援を行う中において、現場でよく聞くのが 「自分はできたのに、なぜこの部下はできないんだ」 という声です。「自分は当たり前にやっていたのに、どうしてこんな簡単なことができないのか」「自分と同じようにやればいいだけなのに…」と、自分を基準にして部下を測ってしまっている。
ただ、本人が意識していないケースがほとんどなのですが、「自分ができていた」ことは、多くの場合 「その人固有の持ち味」があったから です。論理的に整理するのが得意、人を巻き込むのが苦なくできる、初対面でも物怖じしない——そういった持ち味は、誰もが持っているわけではないのです。これが、管理職の育成疲れ、そして、その手前のイライラ(不機嫌)を生み出す原因の一つだと考えています。
そしてもうひとつ。「部下を育てなければならない」という思い込みそのものが、苦しさの根源だと思っています。
「育てなければ」と思っているから、研修を受けさせ、資格を取らせ、OJTで教え込もうとする。もちろん、こういった部下の能力を高めるためのアプローチは大切です。そこで問題なのは、「能力(スペック)さえ上げれば、活躍(パフォーマンス)してくれる」という誤解にあります。実際、能力があってもその力を発揮できない状態になっていることのほうがずっと多い。
――能力があっても発揮できないとは、どういうことでしょうか?
白井: イメージとしては、エアコンのフィルターにゴミが詰まっている状態です。エアコン本体がどれだけ高性能でも、フィルターが詰まっていれば、エアコン本来の力を発揮できません。だから定期的にフィルターの掃除が必要になる。ほかにも、花粉症の時期は「集中できない」「アイデアが浮かばない」など、普段の健康な時よりもパフォーマンス(実力)が落ちている人は多いですよね。
組織においても同じです。どれだけ優秀な人材でも、職場全体がギスギスしていて“不安感”を抱えたままでは、ミスが増えます。上司と部下の互いに“不信感”があったり、価値観・目的の“不一致”があったり、体調が優れなかったりするときも、パフォーマンスが低下します。
私は、 課長・部長が本来担うべき役割とは、「育てる」ことよりも、部下が力を発揮できる「状態を整える」こと だと考えています。そしてその状態が整えば、部下は勝手に活躍しはじめる。活躍して結果が出ると自信がつき、自分からどんどん学びはじめる。つまり、育てようとしなくても、勝手に育っていくんです。「停滞人材」⇒「活躍人材」⇒「自律人材」のようなイメージをもっていただけるとわかりやすいかもしれません。
そのために私が現場でお伝えしているのが、 「3つの視点」で部下を観察するというアプローチ です。
――部下を観察する際の「3つの視点」とは何なのでしょうか?