「挑戦しない組織」を覚醒させた、前代未聞の一手。自律型組織をつくったリーダーの覚悟

かつて、保守的な組織風土と業績低迷という二重の危機に直面していた、株式会社大賀薬局。その経営を引き継ぎ、誰もが驚く手法で会社を根底から変えたのが、代表取締役社長 大賀崇浩さんです。「現状の延長線上では、大賀薬局の歴史は終わってしまう」。その強烈な危機感を胸に大賀さんが打ち出したのは、前代未聞の一手でした。役員全員が反対し、社員からは心ない声が……。しかしそれでもやり切った結果、組織は「言われたことだけをやる指示待ち集団」から「社員が自ら事業を生み出す自律型組織」へと変化。それに伴って、売上も社長就任以前から約1.5倍に。経常利益は5倍以上へと伸長しました。大賀さんが断行したその改革は、いかにして組織を変えたのでしょうか。詳しく伺います。

株式会社大賀薬局
1902年創業の、調剤薬局およびドラッグストアを展開する老舗薬局チェーン。調剤薬局・ドラッグストア・化粧品専門店を、九州全域で121店舗展開。売上高370億円(2025年9月期)、社員数1,434名(2026年5月現在)。代表取締役社長 大賀崇浩氏は2009年に入社し、2017年から現職。

「挑戦しない組織」に危機感。社員の主体性を引き出したリーダーが断行した、前代未聞の一手

――大賀さんは2017年に社長に就任されていますが、当時はどのような組織だったのでしょうか?

大賀 崇浩さん(以下、大賀): 一言で表すと、「大企業病」が蔓延している組織でした。

上からは「前年比○%を達成しろ」という数字だけが現場に下りてくる。しかし、どうやったら売上が上がるのか、そのための戦術はほとんど存在しない状態でした。そこに対応できる店長は、自力で伸ばせる。そうでない店長はどうすればいいのかわからない。横の連携も無く、戦略も統一されていない。名前だけ「チェーンストア」で、実態は個人商店のような状態でした。

また 「言われたことだけをこなしていればいい」と、仕事に対して受け身の社員も多かったですね。新しいことに挑戦したい、成長したいという上昇志向を持つ人材が、組織の中に圧倒的に不足していたんです。

当時は、上司に気に入られることが出世する条件のような部分もあり、意見する社員はすぐに外されてしまう。そんな空気の中では、新しいアイデアを口にすること自体が難しかったと思いますね。そして、優秀な人材から順に会社を去っていきました。 当時は、離職率も高かったです。

――その組織課題は、業績にも影響していたのでしょうか?

大賀: はい。資本力のある全国チェーンのドラッグストアが着々と迫ってくるなか、業績はじわじわと悪化していました。そして ドラッグストア事業の売上が前年比90%を割り込む年も出るなど、瀕死の状態が続いていました。「このままでは、数年以内に立ち行かなくなる」。そういう危機感を、私自身強く感じていました。

そんな絶望的な現実を目の当たりにしたとき、私は ある大胆な改革を実行しました。当時の役員全員に反対されましたし、いわば前代未聞の改革だったと思います。 実際、実現するには非常に厳しい道のりがありました。

ただ、 それをやり抜いた結果、大賀薬局の知名度は県内で飛躍的に向上。それだけでなく、前例のない突き抜けた改革を進めたことにより、徐々に「まずやってみよう」という挑戦の風土が生まれ、時間をかけて「自律型組織」へと変化しました。 それに伴い、売上高も利益も右肩上がりで増加したのです。

――その改革とは、どのようなことだったのでしょう?