社員に自律を促すだけでは、自律できない。ライオン人事が「線を引き、見える化」したもの
2024年度「プラチナキャリア・アワード」最優秀賞など、社員のキャリア自律支援で高い評価を獲得してきたライオン株式会社。2019年から推進する「ライオン流働きがい改革」により個人の成長を会社が強力に後押しする仕組みを整えてきました。一方で「社員の自律」「組織文化の変化」が進行する中では、様々な課題にも対峙。「本当の意味で、自ら動き出すのは2割ほど」「社員に自律を求めるも、強制するのは矛盾」といった状況に対し、どのような試行錯誤がなされ、また仕組みが形作られたのか?同社人事部 青木陽奈さんに伺いました。
「社員に自律を求めるも、強制するのは矛盾」というジレンマ。ライオン人事が引いた境界線
――貴社の人事改革に至る背景や経緯教えてください。
青木 陽奈 さん(以下、青木): 当社は「より良い習慣づくりで、人々の毎日に貢献する(ReDesign)」というパーパスを掲げています。これは単にメーカーとして製品を届けるのではなく、製品やサービスを通じて日々のより良い習慣づくりを目指すことを意味しています。
そしてそのための中長期戦略フレーム「Vision2030」の中で、海外売上高比率50%、新規事業の創出、そして「人と組織の変革」を盛り込みました。
これらを加速する環境の変化や不確実性の中で実現していくには、従来型の人材マネジメントでは限界があり 「事業戦略に対応した人材ポートフォリオの充足」を重要な経営課題と位置づけ、そのための人事改革がスタート しました。
――どのような取り組みから始められたのでしょうか?
青木: まず「社員の働きがい」という部分から着手しました。2019年に「ライオン流働きがい改革」を設定し社内外に公表。「社員一人ひとりが企業人として、家庭人として自己成長し、充実した人生を実現できている」状態を「働きがい」と定義し、これを生み出すための仕組みづくりを進めていきました。
特に2021年ごろにかけてはフルフレックス勤務、テレワーク、服装の自由化など、今では当たり前になっているような、自律的な働き方を実現するルール・環境を整備していきました。
同時に、年次ではなく成果でキャリアアップできる人事制度の実現を見据え、社内にキャリアデザインのサポートを設置。またその一環として副業制度も2020年に開始し、社外でも自分の経験や強みを生かせる場所・機会を作れるようにしました。社員が自分の「武器」を見つけ、主体的にキャリアを形成する一助にしてほしいという思いからです。
また成長のための学びの領域でも、従来の階層別研修を改め、600以上の学習コンテンツから個人が必要なものを選べるオンデマンド型プラットフォーム「ライオン・キャリアビレッジ(LCV)」を整備。個人の主体的な学び、成長を後押しするインフラを整えていきました。
――それらの改革を進める中で、直面した課題などはありますか?
青木: 「社員に自律と成長を促す」という部分で発生してしまうジレンマがありました。
「自律して、自ら成長してほしい」と掲げるのは簡単ですが、それだけで全員が自ら動けるかというと、決してそうではありません。 多くの人は「自分に何が求められているか、どこに向かって成長すればいいか」をある程度示されないと動きづらいんですよね。かといって会社側が強制してしまうと、それはもはや「自律」とは言えません。
例えばLCVをはじめとした研修・学習インフラを整備しても、自らそれを継続的に活用できていたのは全社員の2割ほどでした。それ以外の社員にどう動いてもらうか?という部分で、様々な試行錯誤がありました。
そうした一連の 「個人の成長に対する、会社の役割」という部分で一つ、2023年に当社なりの答え を出しました。
――どのような答えでしょうか?