社長の給与までオープンだった組織が「独裁」に転じた必然。リーダーが危機下で貫いた決断

「今後、皆さんの意見は聞きません。全部、独裁でやります」—コロナ禍、債務超過が膨らみ倒産が迫る状況でそう宣言したのが、山梨県に本社を置くアパレルEC企業、株式会社フォーカスの代表取締役社長・常松憲太さんです。その後、会社はV字回復を果たし、社員の平均報酬は約100万円以上アップ、海外展開、世界トップクラスの大学からの新卒入社が相次ぐなど、今まさに躍進の真っ只中にあります。この復活の背景について常松さんは「経営危機下で描いた復活の設計図」と「自ら考え、動く社員」の存在を挙げます。詳しく伺いました。

「全部、独裁でやります」倒産の危機にリーダーが下した決断

――コロナ禍以前の貴社の状況について教えてください。

常松憲太さん(以下、常松): 当社はTシャツやタオルなどにオリジナルのデザインをプリントするECを展開しています。受注から製造・出荷まで一気通貫で、短納期が最大の強みです。

2009年に創業し、2012年にオリジナルTシャツの販売を始めてしばらくは順調に成長を続けたものの、2014年~2018年頃は売上が10億円前後で頭打ち、伸び悩むようになりました。

社員数も毎年5~6人が入れ替わりながら30人前後をいったりきたり。常に新入社員のOJTに追われていて、組織として一向に成長しない停滞期間が続きました。当時は何をやるにしても手探りでしたね。

そうした状況から、人材や組織文化、市場の成長、自社のマーケティングなどが次第に噛み合って手応えが出てきたのが2019年ごろ。売上は12.5億円に伸び、「来年は14.8億くらいはいけそう……」という会話をしていた矢先、コロナ禍に見舞われました。

――コロナ禍の影響は?

常松: 当社の商品はイベントや学校行事で使われるものが中心ですので、緊急事態宣言や休校措置は致命的でした。注文が激減し、2020年には1.3億円ほどの損失を出して債務超過に。2021年4月には、債務超過は2.5億円にまで膨らみました。

こうも急速に債務超過に陥った背景には、当社の強みの裏返しでもある財務体質がありました。 当社は他社と差別化を図るため「短納期」を追求し、一連のシステムを自社開発。そして自社工場まで持っていました。2019年ごろに業績が軌道に乗ったのは、このビジネスモデルが市場のニーズを捉え出したことが要因です。

短納期については外注の工場との連携を模索したのですが、当社の要望やシステムの仕様に対応できる外注先がほとんどなく自社工場を持つ判断に至りました。年間のシステム投資は1億円以上にのぼり、競合他社にはできないことでしたので、当社の強み・差別化ポイントとして機能していました。

しかしこれが、コロナ禍では資金繰りの面で弱みになりました。当時は成長局面で借入れを繰り返して設備投資を行っており、内部留保は薄くなっていました。 公庫から3億円を借り入れ、元本返済だけで年間3,000万円ほど。その分だけで返済するには経常利益ベースで年間5,000万円以上の積み上げを続けなければなりません。 売上激減の状況が続けば、どう考えても倒産という状況でした。

――とはいえ会社は存続し、急成長しています。そのきっかけ、要因は?

常松: 当時はあまりにも思い詰めていて記憶があやふやではあるのですが、「どう会社を閉じるか」といった話題も出てくる中で一つだけ、微かに希望が見える話を耳にしました。

私の中では、 考えれば考えるほど「生き残る道はこれしかない」と思えたのですが、社内や金融機関はじめ、誰も賛同してくれる人はいません。

そうして追いつめられた役員会で 「今後、皆さんの意見は聞きません。全部、私の独断・独裁でやります」と宣言 し、残っていた借入金のすべてを新規の設備投資にあてることを決断しました。

その投資がコロナ禍の終息期ごろから復活の火種になり、また 創業以来貫いてきた「社員が自ら業績貢献を考え動く」という組織文化が、成長に加速度を与えてくれました。

――独裁宣言をしてまでの決断、その根拠は何だったのでしょうか?