連載:第72回 総合
事業継続において「紙中心の商取引はリスクが高い」。約4社に1社が過去3年で災害による事業中断を経験


政府の地震調査委員会は南海トラフの巨大地震が今後30年以内に起きる確率について、2025年1月1日時点で、これまでの「70%~80%」から「80%程度」に引き上げ、備えを進めるよう求めています。BCPは、いつ発生するか分からない緊急事態に備え、事業を守る切り札となる計画です。今回の調査では、被災経験がある企業では約9割がBCPの策定に取り組んでおり、被災経験がない企業の半数を大きく上回る結果となりました。緊急事態に直面しても事業を続けられるよう、情報のデジタル化を含むBCP策定に積極的に取り組み、継続的に見直すことが重要です。

約4社に1社がBCP対策に着手できていない
株式会社インフォマートは、経営者・役員、会社員、公務員326名を対象に、BCP対策に関する実態調査を実施しました。
勤め先におけるBCPの策定状況を伺ったところ、「行っている」が35.3%と最多となり、次いで「現在取り組んでいる最中」が29.8%となりました。合算すると65.1%となり、BCP策定にすでに着手している企業が6割を超えていることが分かりました。
一方、「行っていないし今後取り組む予定もない」と回答したのは23.4%となり、約4社に1社がBCP対策に着手できていないことが明らかとなりました。
過去3年間において、勤め先が災害等の影響で「一時的に事業活動が中断」または「オフィスに行けなくなったこと」があるか聞いたところ、「ある」と回答した割合は25.8%でした。約4社に1社が、何らかの災害によって「事業中断」や「オフィスに行けない状況」に陥ったことが明らかになりました。
また、勤め先におけるBCPの策定状況と被災経験の有無を組み合わせて集計した結果、被災経験が「あり」、BCP策定を「行っている」または「現在取り組んでいる最中」と答えた方の回答を合算すると88.6%と約9割が積極的な姿勢を示しました。
一方、被災経験が「ない」企業がBCP策定に取り組んでいる割合の合算は約5割にとどまったことから、災害等を経験した企業は事前の対策をより重視している傾向にあることが分かりました。
被災経験がある企業は、事業継続において「取引環境のデジタル化の重要性」を強く認知
BCP対策を「行っている」または「現在取り組んでいる最中」、「行っていないが今後取り組む予定」と回答した方に、その内容について聞いたところ、「防災マニュアルの作成」が38.3%で最多、次いで「緊急時の連絡網、指揮命令系統の整備」が37.7%、「緊急時に優先すべき事業や活動の策定」が37.0%となりました。
一方、「ペーパーレス・脱ハンコ等の推進」は21.4%、「リモートワーク環境の整備」は23.4%とそれぞれ約2割にとどまり、まだ十分なBCP対策が進んでいないことが分かりました。
また、災害時における事業継続の観点から、紙中心の商取引がBCP対策上もたらすリスクについての認識を聞いたところ、「非常にリスクが高い」が11.7%、「ややリスクが高い」が34.4%となりました。合算すると46.1%となり、半数近くが事業継続において紙中心の商取引にリスクを感じていることが分かりました。
勤め先における取引書類のデジタル化状況について聞いたところ、「完全にデジタル化している」と回答した割合が最多となったのは「請求書」で24.5%となりました。一方、それ以外の書類は2割を切り、最もデジタル化が進んでいないのは「契約書」で16.9%となりました。
また、被災経験の有無によるクロス集計結果では、被災経験のない企業よりも被災経験のある企業の方が、すべての取引書類において「完全にデジタル化している」割合が高いことが明らかになりました。実際に災害を経験した企業は、被災後の事業継続において取引環境のデジタル化の重要性を強く認知している、と推察されます。
調査概要
調査対象:20代~50代の会社員、経営者・役員、公務員
調査方法:インターネットリサーチ
調査内容:企業のBCP対策に関する実態調査
調査期間:2025年3月7日(金)~3月10日(月)
回答者 :326名
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