連載:第94回 組織作り その要諦
「そんな気持ちなら辞めてしまえ!」で目覚めたリーダー。危機感ゼロの老舗企業を蘇らせた、たったひとつの要諦


売上は年々下がり、経営危機なのに従業員は他人事……。家業である老舗和菓子屋に入社した株式会社虎屋本舗 取締役会長で十六代目当主の高田信吾さんは、大きな危機感を覚えます。ただ、自分自身も彼らと同じだったと気づかされる出来事が。先輩経営者からかけられた「そんな気持ちなら辞めてしまえ!」という言葉で猛省し、以降、精力的に改革を進めます。結果、ヒット商品を連発し売上は向上するも、社員の士気は下降……。その「理由」に気づいたとき、高田さんはハッとしました。再び改革に乗り出し、社員のモチベーションは向上。現在では、世代を超えてアイデアが飛び交う主体性の高い組織に進化しています。組織のピンチにおいて、高田さんが気づいたこと、その改革の内容とは。詳しく伺います。

株式会社虎屋本舗
取締役会長 高田 信吾(たかた しんご)さん
1963年広島県生まれ。虎屋本舗十六代目当主。國學院大學経済学部卒業後、大阪の大手アパレルメーカーに入社し、営業職として勤務。先代である父が余命宣告を受けたことをきっかけに、1990年、27歳で株式会社虎屋本舗へ入社。1994年、代表取締役社長に就任。2021年より現職。虎屋本舗は、1620年創業の老舗菓子店。従業員数80名、売上高5.6億円(2025年2月現在)
売上が上がっても、モチベーションは下降……。理由を追求して気づいたこと
――貴社は、創業400年以上という老舗企業でありながら、従業員の皆さんがいきいきと働き、ベテランの高齢社員から若手社員まで積極的にアイデアの出る組織だそうですね。ユニークな商品や活動で、多くのメディアに取り上げられています。
高田信吾さん(以下、高田):ありがとうございます。まさに、高齢の職人と若手がコラボして開発した「はっさく大福」という商品が大ヒットし、今では虎屋本舗の代表的な和菓子の一つとなっています。現在の社長の声かけもあり、現場からは時代に鑑みた商品やサービスのアイデアがどんどん生まれています。
ただ、最初からうまくいっていたわけではありません。僕が虎屋本舗に戻ってきた1990年頃は従業員数30名程度、売上高は2億円ほどでした。年々売上を落としており、経営も厳しい状況で……。ただ、工場に行くと従業員は「どこ吹く風」。誰も危機感を持たず現状を変えようとしない、まさにぬるま湯組織でしたね。
ただ、危機感を持っていなかったのは、ある意味僕も同じだったかもしれません……。そんな僕を目覚めさせてくれた出来事があります。
業績も右肩下がり、社員もやる気が無い。そんな会社を継ぐことが決まり「俺のせいじゃないのに、なぜこんなに苦労しなければいけないのだ」と日々悶々としていました。そんなとき、地元に戻った僕のために先輩経営者たちが祝いの席を設けてくれたんです。高級クラブに連れて行ってもらい、ホステスさんに「名刺をください」と言われたとき、思わず「饅頭屋の名刺なんて恥ずかしい」と言ってしまって……。
すると、普段温厚な先輩が「そんな気持ちなら、辞めてしまえ!」と烈火の如く怒り出したんです。その会はお開きとなり、僕は泣きながら帰りました。そして冷静に「自分は何を恥ずかしいと感じていたのか」を考えてみました。すると、自分の「理想」ではない会社の現状に対し、ただただ不満を感じているだけなのだと気づきました。
そこで、ある「覚悟」を決めました。それが、その後の自分自身と会社の未来を大きく変えることになります。
――その「覚悟」とは、何だったのでしょうか?
この記事についてコメント({{ getTotalCommentCount() }})
{{selectedUser.name}}
{{selectedUser.company_name}} {{selectedUser.position_name}}
{{selectedUser.comment}}
{{selectedUser.introduction}}
関連記事
バックナンバー (95)
組織作り その要諦
- 第95回 社員のやりがいを奪っていたのは自分。先輩経営者の叱責で目覚めたリーダー、人が辞めない組織への軌跡
- 第94回 「そんな気持ちなら辞めてしまえ!」で目覚めたリーダー。危機感ゼロの老舗企業を蘇らせた、たったひとつの要諦
- 第93回 「自社のメリットを第一に考える採用は間違っていた」と気づいたリーダー。稲盛和夫氏から学んだ、たった一つの指針
- 第92回 「若手を理解していないのは自分だった」と目覚めた社長。社員の主体性あふれる組織に必要なリーダーの絶対条件
- 第91回 「お金の亡者」と言われたリーダーが大量退職で気づいた組織の本質。老舗企業に学ぶ自律型組織の勘所