「本音を話していないのは自分だった」と目覚めた社長。社員の離職を止めた組織づくりの本質

成田屋株式会社
代表取締役　成田 敦さん

1969年生まれ。秋田県出身。広告業界、コンピュータ業界、建築⾜場業界などで会社員として約20年間過ごしたのち、2011年6⽉に成田屋株式会社を創業。建物の礎となる「⾜場」ビジネスで全国10拠点に事業所を展開。

本音を言わない、陰で悪口を言う…組織は崩壊寸前に。

――現在は着実に売上を伸ばし、成長を続けている貴社ですが、一時は会社を畳むか真剣に考えるほど、危機的状況に陥っていたそうですね。当時の状況を教えていただけますか？

成田 敦さん（以下、成田）： 当社は2011年の設立以来、足場資材の販売・レンタル事業を軸に推進、2016年には売上高10億円を達成しています。ただそこからの数年間は、厳しい状況が続きました。売上自体は伸び続けていたんですが、営業利益が実質的には赤字に…。

組織についても、いつ崩壊してもおかしくないほどボロボロの状態でした。営業社員については、3年間で13名全員が入れ替わってしまったほど。リーダーが辞めて、その部下が辞めて、新たに採用したリーダークラスの人員も全員が辞めていく…。とにかく人が定着しない、採用しては辞めていくという悪循環を繰り返していました。

当時は、なぜこんなことになっているのかわからなかったんですが、今振り返ると、 私の社員に対する「任せ方」に、とても致命的な問題がありました。

ちょうどその頃、30人規模の組織に成長したこともあり、リーダーという役職をつくり、それまで私が一手に担っていた営業活動について、社員に任せることにしました。私が失敗してしまったのは、「任せる」と言ったにもかかわらず、結局自分が口を出してしまっていたこと。「任せる範囲」について明確に伝えていなかったことです。

たとえば、お客様から受けたクレームや課題を解決するためには、現場だけで判断できないこともあります。そういった大きな問題についても、社長である私に共有されず勝手に進んでいました。

私が必要だと思っている報告が上がってこない、何も共有されない。それを社員に伝えるのですが、彼らとしては「任せると言いながら、結局は口出しするのか」と思っていたようで…。結果、不信感を植え付けてしまうことになりました。

すると、会議では “社長が喜びそうな言葉”とでも言うのでしょうか、表面だけを取り繕うようなお飾りの言葉ばかりが飛び交うようになり、リーダーが「やります」と宣言していたことが実行されていない…なんてこともありました。ある社員から「〇〇さん、陰ですごい社長批判をしていますよ」といった内部告発を受けることも。

面と向かって本音を言わない、人を見て言うことを変える、陰で悪口を言う――こんなことがはびこる組織にするつもりは毛頭なかったのに、 いつの間にか“隠蔽体質の組織”が出来上がってしまっていた のです。

社内はいつもギスギスしていて、モチベーションが高いとは言えない状況。人間関係の問題が足を引っ張り、肝心の事業が前に進まない。営業利益の落ち込みは、こうした組織の機能不全が大きな原因だったと思います。

私自身も、誰を信用したらいいのかわからないような状態で、いっそのこと会社を畳んだほうが、取引先様の為、社員の為、そして自分や家族の為にも最善なのでは…と何度も考えました。しかし、自分が強い意志を持ち、覚悟を決めて創業した会社です。最悪の結果を避けるべく、解決策を探し続ける日々でした。

「本音で話していないのは自分だった」と気づいた瞬間

――そんな危機的状況を、どう改善していったのでしょうか？